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2020年02月29日

《宅建試験対策1》錯誤(意思表示)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫

a)錯誤とは、要するに勘違いのことですが、錯誤によって契約をしてしまった場合の契約当事者間での効果が、「無効」から「取消」に改正されました。

 錯誤は、詐欺のケースと重なる場合も多く、改正前から取消的な無効などと言われていましたが、改正により、詐欺と同様に効果が「取消」となりました。


b)勘違いした人に「重大な過失」(重過失)がある場合(つまり、あまりにもうっかりしていた場合)、改正前は、そのような勘違いは保護に値しないことから、契約の相手方を保護するために、(解釈上はともかく)条文上は、錯誤無効の主張はできないとされていました。

 しかし、いくら重過失で勘違いをしていたとしても、契約の相手方の方も保護に値しないと考えられる場合、具体的には、@相手方が勘違いを知っていた(相手方の悪意)、A相手方が重過失で勘違いを知らなかった(相手方の善意かつ重過失)、B相手方も同じ錯誤に陥っていた(共通錯誤)という3つの場合は、条文上、錯誤による取消を認めることになりました。


c)意思表示に瑕疵がある(詐欺、強迫など)場合、利害関係を持つに至った第三者に対してもその点を主張できるかという典型論点がありますが、改正前は、錯誤については第三者に対しても主張できるかどうかの規定がありませんでした。

 改正により、錯誤があった場合、「善意かつ無過失」の第三者には主張(対抗)できないという規定が設けられました。したがって、いわゆる取消前の第三者が出てきた場合、その第三者が錯誤について知っていたか、知らないとしても過失があったかによって、錯誤取消を第三者に対しても主張(対抗)できるかどうかの結論が変わることになりました。


錯誤(表1).PNG



錯誤(表2).PNG

『宅建試験合格のための「ここだけ押さえる改正民法」』の連載スタート

 2020年度(令和2年度)の宅建試験からは、2020年4月施行の改正民法の内容を前提とした出題がされることになります。
 改正民法の内容は多岐にわたりますので、これまでに民法の学習をしてきた方は、民法の知識をかなり「入れ替え」しなければなりません。当然ながら、主に権利関係について、単純に過去問を解く学習では、前提となる民法自体が大きく変わっていますので、混乱してしまうことになります。
 そこで、『宅建試験合格のための「ここだけ押さえる改正民法」』として、毎週1回程度のペースで、膨大な民法改正の中から、宅建試験合格のために最低限必要と思われる知識を、分野ごとにコンパクトに紹介していきます。
 具体的には、≪改正されたポイント≫で、改正の具体的な内容と押さえておきたいポイントについて説明しています。そして、≪改正ビフォーアフター≫では、改正前と改正後の違いについて簡単に比較できるようにしています。さらに、≪問題文に出てくる表現で改正後の内容をCheck≫では、実際に問題文として出てくるような固い表現を使って改正された内容をまとめていますので、最終的にはこのような表現に慣れてください。

2020年02月12日

2020年4月から、不動産賃貸借契約における連帯保証人の極度額をいくらにすればよいか?

 2020年4月から、いよいよ改正民法がスタートします。改正の中には、個人根保証において極度額(要するに、「保証人の責任は〇万円まで」という上限)を定めていない場合、個人根保証契約を無効とする(つまり、保証人として責任を負わなくてよい)という規定があります。
 不動産賃貸借契約で言えば、これまでは特に上限を定めない形で、賃借人の身内や知人などの個人が連帯保証人となり、賃料の滞納などがあった場合には、保証人に支払をしてもらうということが当たり前でした。しかしながら、2020年4月以降は、賃貸借契約においてこれまでのような上限の定めのない個人の連帯保証では保証契約として無効となりますので、保証人がいないのと同じことになってしまいます。
 そこで、保証契約において極度額を定めるとして、具体的にどのくらいの額にすればよいのかは非常に悩ましいところです。この点に関して、一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会(全宅管理)が、会員を対象としたアンケート調査を実施し、その調査結果が公表されました。これによると、賃料5万円と仮定した場合、30万円以下が16%、30万円超〜60万円以下が25%、60万円超〜120万円以下が30%、120万円超〜180万円以下が4%、180万円超が5%で、多くの会員が「賃料の2年分である120万円」もしくは「賃料の1年分である60万円」と回答したとのことです。ただ、中には、「借主が火災保険に無加入である場合は、万一の損害に備えてある程度の金額は必要」という理由で、2000万円という回答もあったようです。
 というわけで、アンケートの結果からは、賃料の2年分までが相場ということになりそうですので、実務的にはこのような流れになると思います。もっとも、民法上は、極度額を定めればいいとされているだけで、金額的にいくらまででなければならないという制限は明記されていません。となると、「大は小を兼ねる」で、とにかく高めに極度額を設定しておけばいいのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、あまりにも極度額が高額過ぎる(この線引き自体がまた難しいのですが・・・)ということになると、極度額の定め自体が公序良俗違反などで効力が否定されることになり、結局、保証契約が無効になってしまうリスクがあります。
 なお、改正民法は、基本的に2020年4月以降の契約に適用がありますので、逆に言えば、2020年3月以前の契約については改正前の民法のルールに従うことになります。悩ましいのは、2020年3月以前の賃貸借契約が4月以降に更新された場合ですが、保証契約について「合意による更新」があった場合は、新たな契約と評価して改正民法に従うことになり、自動更新の場合は、新たな契約とは評価できずに、改正前民法に従うことになるのではないかと思います。
posted by 上田孝治 at 22:20 | TrackBack(0) | 不動産・宅建コラム

2020年02月06日

高校生が自転車で死亡事故を起こし、約9000万円の賠償命令(2020年2月6日のニュース)

 ライブドアニュース(共同通信)によれば、高知市で2015年、当時高校生の男性が自転車で警察官に衝突し死亡させた事故を巡り、遺族が男性に損害賠償を求めた訴訟の判決で高知地裁が約9400万円の支払いを命じた、とのことです。


 高校生が、何か悪いことをやって誰かに危害を加えた場合、被害者(被害者が亡くなった場合はその遺族)は、その高校生に対して、不法行為を根拠として損害賠償請求をすることができます。もっとも、被害額がある程度大きくなる場合には、いくら高校生に損害賠償義務があると言ったところで、実際上、支払が困難ということになります(なお、加害者側が、個人賠償責任保険などの保険に加入していればそこから支払われるケースもあります。)。

 こういった場合、被害者の損害賠償請求を実のあるものにするために、比較的資力のある「高校生の親」に責任を負わせることが考えられます。

 この点、その高校生が日常的に悪いことを行っていた(いわゆる素行不良)にもかかわらず、親が漫然と放置した結果、案の定、危害が加えられたような場合は、親自身の損害賠償責任が認められる可能性があります。

 では、親が、素行不良の子どもを漫然と放置していたというような事情がない場合はどうなるかというと、民法には監督義務者の責任の規定があります。これは、未成年者が「責任能力を欠く」と評価できる場合、未成年者本人は損害賠償責任を負わない代わりに、特別の事情がない限り、監督義務者(通常は親)が肩代わり的な責任を負うというものです。そして、実務上、未成年者が責任能力を欠いているかどうかについては、おおむね12〜13歳以上であれば責任能力ありとされています。

 以上をアバウトにまとめると、小学生くらいまでの子どもが何か悪いことをすれば、子ども本人は責任を負わない代わりに、親が、原則として損害賠償責任を負うのに対して、中学生以上が何か悪いことをしても、親が漫然と放置していたような事情がない限り、親は損害賠償責任を負わないということになります。

自転車事故・画像.png
posted by 上田孝治 at 23:33 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年02月05日

遺言を撤回したいときにどうするか?

 遺言は、一度作ったとしても、いつでも簡単に撤回することができますが、撤回の方法としては4つ考えられます。
 1つ目は、新しく遺言を作り、その中で、前の遺言の全部または一部を撤回するという方法です。
 2つ目は、新しく遺言を作り、その中で、前の遺言を撤回するとははっきり書かずに、内容的に前の遺言と抵触(矛盾)する内容とする方法です。この場合、撤回されるのは、前の遺言の「全部」とは限らず、内容的に抵触(矛盾)する部分に限られます。
 3つ目は、遺言に書いた内容と抵触(矛盾)する行為をする方法です。例えば、遺言で「○○の不動産をAに相続させる」と書いているにもかかわらず、その不動産を生前に売却するようなケースです。
 4つ目は、遺言書を故意に破棄する方法です。
 以上のように、@遺言による撤回、A矛盾する遺言、B矛盾する行為、C遺言書の破棄の4つの方法がありますが、実際には、撤回したい遺言書をきっちりと破棄して、新しい遺言書を作成するのがいいと思います。
posted by 上田孝治 at 23:48 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム

2020年01月29日

遊具事故で保育所側に賠償命令(2020年1月28日のニュース)

 「NHK NEWS WEB」によれば、善通寺市の保育所で3歳の女の子が遊具の隙間に首を挟んで亡くなった事故をめぐり、両親が保育所の運営法人など相手取って損害賠償を求めていた裁判で、高松地方裁判所は、法人に3000万円余りの賠償を命じる判決を言い渡した、とのことです。


 この件に関しての具体的な情報や経緯などは全く分かりませんが、一般的に、設置してある遊具によって事故が起きた場合の損害賠償請求の根拠としては、@製造物責任の追及、A土地工作物責任の追及が考えられます。

 製造物責任の追及は、製造物責任法(PL法)に基づくもので、製造物に欠陥がある場合に、製造業者(メーカー)に損害賠償請求をする方法です。PL法にいう「製造物」は動産に限られますので、土地に設置されている遊具が不動産ではなく「製造物」にあたると言えれば、PL法に基づく責任追及が可能となります。被害者にとってのポイントは、製品に欠陥があることは証明しなければなりませんが、メーカーの落ち度を証明する必要はないという点です。なお、被害者が責任追及できるのは、製造物が市場に出てから10年間に限るという期間の限定があるのも特徴です。

 次に、土地工作物責任の追及は、民法に基づくもので、「土地の工作物」(土地にくっついて作られた設備のようなもの)の設置や保存に不完全な点がある場合に、設備の占有者や所有者に損害賠償請求できる方法です。固定式の遊具は「土地の工作物」ですので、遊具が当然に持っているべき安全性を欠いているような場合は、遊具の占有者である運営法人などが損害賠償をしなければなりません。被害者にとってのポイントは、工作物の設置や保存に不完全な点があったことは証明しなければなりませんが、占有者や所有者の落ち度を証明する必要はないという点です。

 なお、この土地工作物責任によって被害者に損害を賠償した占有者や所有者は、安全性を欠くような遊具を作成した製造業者に落ち度がある場合、被害者に賠償した分を製造業者に対して請求することができるとされています。

遊具・画像.png
posted by 上田孝治 at 12:00 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年01月27日

遺産狙いの結婚を見破る(?)一つの質問

 遺産狙いで資産家の高齢者と親しくなり、あの手この手で多額の遺産を手に入れるという話は、世間一般のみならず、仕事上もときどき耳にします。
 かつて「後妻業」という形で話題にもなりましたが、こういう話において、犯罪手段によらずに、遺産を手に入れるルートとしては大きく2つあります。
 1つ目は、遺言を作成してもらうルートです。この「遺言ルート」は、結婚していなくても可能な方法ですが、何と言っても、資産家本人の意思に基づいて遺言を作成してもらわなければ始まりません。特に、高齢者が認知症などで判断能力が乏しい場合、公正証書遺言であれば、そもそも公証人から作成を断られるケースもありますし、自筆証書遺言であれば、その有効性をめぐって法定相続人である親族との争いが生じる可能性が高くなります。また、仮に有効な遺言を作成していたとしても、法定相続人から遺留分侵害額請求を受けることで、受け取れる額が減る可能性もあります。
 2つ目は、結婚をするルートです。「結婚ルート」によれば、遺言など全くなくても、配偶者として、当然に一定額を受け取れることになりますので、遺産を手に入れたい側としては確実な方法と言えます。もちろん、結婚しても、その後に離婚してしまえばこの方法も終わりですが、片方が離婚を拒否している場合、浮気や暴力などの特別の事情がない限り、なかなか離婚は認められません。また、結婚している場合、「配偶者には一円も渡さない」という遺言を作成することはできますが、その場合でも配偶者には遺留分がありますので、遺言むなしく、一定額は配偶者の手に渡ってしまうことになります。
 というわけで、資産家の高齢者が結婚してしまうと、結婚後に「実は後妻業的な話だった」と分かっても、基本的には後の祭りということになります。
 なお、遺留分については、生前に家庭裁判所で手続をして、裁判所の許可をもらって放棄することができますので、遺留分の生前放棄を条件として結婚するというやり方も考えられなくはありません。しかし、遺留分放棄の許可には、放棄の代償のようなものが必要とされますので、「結婚する」というだけでは代償とは言えず、裁判所の許可はもらえないと思います。もっとも、実際上は、結婚の話が出た際に、資産家の方から「結婚した場合、遺留分の生前放棄をお願いしたい・・・」などと言うと、後妻業的な人であれば勝手にフェードアウトするような気もしますので、このような質問をすることは、遺産狙いの結婚かどうかを見破るためのリトマス試験紙としての意味はあるかもしれません。
posted by 上田孝治 at 14:19 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム