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2020年06月06日

《宅建試験対策15》第三者による弁済(債権の消滅)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)債権は、通常、債務者によって弁済がされますが、債務者以外の「第三者による弁済」であっても、それで債権を満足させられるのであれば認めてもかまわないわけです。そのため、第三者による弁済は、原則として有効です。
 これに対して、@画家が絵を描く債務のように、債務の性質上、第三者が行うのが許されないような場合や、A当事者が、第三者による弁済を「認めない旨の特約」をしているときは、例外的に第三者による弁済は認められず、無効になります。なお、このAの例外については、改正前後で条文上の文言が若干変わっていますが、実質的な変更はありません。

b)「債務者の意思」に反する第三者の弁済については、有効となる場合と無効となる場合があります。
 まず、物上保証人や抵当不動産の第三取得者など、弁済をすることについて「正当な利益」(なお、改正前は、「利害関係」という文言でしたが、実質的な変更ではありません)を有する第三者による弁済は、債務者の意思に反するものであったとしても有効となります。
 逆に言えば、正当な利益を有しない第三者が、債務者の意思に反して弁済をすれば「無効」となります。ただし、改正により、正当な利益を有しない第三者が、債務者の意思に反して弁済した場合(=本来、弁済が無効となる場合)であっても、債務者の意思に反することを「債権者が知らなかった」ときは例外的に有効になるという債権者を保護する規定が設けられました。このような保護規定がないと、債務者の意思に反することを知らずに弁済を有効として扱った債権者に迷惑がかかってしまうからです。

c)「債権者の意思」に反する第三者の弁済については、改正前はそもそも規定がありませんでしたが、改正により、債務者の意思に反する場合と同じような規定が設けられ、有効となる場合と無効となる場合で分かれます。
 まず、「正当な利益」を有する第三者による弁済は、債権者の意思に反するものであったとしても有効となります。
 他方で、正当な利益を有しない第三者が、債権者の意思に反して弁済(例えば、一方的に債権者の口座に振り込むようなケース)をすれば「無効」となりますし、債権者としては弁済の受領を拒絶できます。もっとも、この例外として、第三者が債務者の委託を受けて弁済することを債権者が知っていたときは、債務者の意思に反しないことが明らかなケースであることから、弁済は有効となり、債権者は弁済の受領を拒むことはできません。これは、第三者による履行引受があった場合の例外ということになります。


第三者弁済・表1.PNG



第三者弁済・表2.PNG

2020年05月30日

《宅建試験対策14》債務者の抗弁(債権譲渡)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)債権譲渡があった場合、債務者は、譲渡に直接関わっていないわけですから、債権譲渡の対抗要件が備わるまで(通知や承諾まで)に譲渡人に対して主張できた内容(抗弁)を、譲受人に対しても同じように主張できて当然のはずです。
 ところが、改正前は、この例外として、債権譲渡について、債務者が「異議なき承諾」をした場合、債務者は譲受人に対して抗弁を主張できないというルールがありました。
 しかしながら、単に債務者が何も言わずに承諾した(異議なき承諾)というだけで、抗弁を主張できなくなるのは、債務者がかわいそうということで、この「異議なき承諾」の例外ルールは廃止されました。その結果、債務者は、譲渡通知の場合でも承諾の場合でも、対抗要件が備わるまでに生じた抗弁を譲受人に主張できることになりました。

b)債権譲渡があった場合、債務者が譲渡人に対して有している反対債権を使って、譲受人に相殺の主張ができるかどうかについて、改正前は、民法に明確な規定がありませんでした。もっとも、最高裁は、譲渡通知を受ける前から譲渡人に対して反対債権を有していれば、譲受人に対して相殺を主張できるという判断をしていました。
 改正後は、まず、この判例ルールを条文化し、対抗要件が備わる「前」に譲渡人に対して取得した反対債権により、譲受人に対して相殺を主張できるという改正がされました。つまり、この点については、条文化されただけで、実質は変わらないということです。
 他方、改正により、対抗要件が備わった「後」に譲渡人に対して「取得」した債権であっても、対抗要件が備わる「前の原因」に基づいて生じた債権などについては、「他人の債権」を取得した場合を除いて、相殺を主張できるとされました。したがって、この点については、改正前よりも相殺できる範囲が広がったと言えます。


債務者の抗弁・表1.PNG



債務者の抗弁・表2.PNG

2020年05月28日

紀州のドンフアン親族4人 財産寄付の遺言は無効と提訴(2020年5月27日のニュース)

 毎日新聞によれば、「紀州のドンフアン」と呼ばれた資産家で、2018年5月に急性覚醒剤中毒で死亡した和歌山県田辺市の会社社長の兄ら親族4人が、「全ての遺産を市に寄付する」とした遺言書は無効として、和歌山地裁に提訴した、とのことです。

 この件については、亡くなった会社社長に子どもや両親はいなかったようなので、利害関係者としては、会社社長の@配偶者(妻)、A兄弟姉妹、遺産を寄付するとされたB田辺市の三者ということになります。
 また、記事によれば、「和歌山家裁田辺支部が遺言書の要件を満たしていると判断した」とのことですが、これはおそらく、自筆証書遺言の「検認」と呼ばれる手続です。この「検認」は、遺言書の形式的な要件を裁判所が確認して、遺言書の記載内容を保存しておくだけの手続ですので、遺言書を作成したときの遺言者の判断能力がどうであったか、とか、遺言書が実は偽造されていたのではないか、などの実質的な遺言の有効・無効の判断をする手続ではありません。実際上、裁判所での「検認」の手続は、数分で終わるごく簡単なものです。
 したがって、裁判所での「検認」の手続が済んでいても、利害関係者が遺言書の無効を訴えることは何ら問題ありません。
 では、遺言が有効か無効かで、どのような結論の違いが出るのでしょうか。
 まず、遺言が有効な場合は、田辺市が全ての遺産を受け取ることができますが、妻は、(相続欠格や相続廃除になっていなければ)自分には遺留分(いりゅうぶん)があると言って、田辺市に対して、遺産の半分に相当する金銭を支払うように求めることができます。他方で、兄弟姉妹には、法律上、遺留分は認められていません(遺言が優先されるということです)ので、何ももらえないということになります。
 次に、遺言が無効な場合は、田辺市は何ももらうことはできません。無効により、遺言がないのと同じ扱いになりますので、法定相続によることになり、法定相続人(妻と兄弟姉妹)のうち、妻が4分の3、兄弟姉妹が(全体で)4分の1の相続分になります。兄ら親族が、遺言の無効を求めているのは、このためと思われます。
 ということで、田辺市からすれば遺言を有効と認めてもらいたいでしょうし、兄弟姉妹からすれば遺言を無効と認めてもらいたいということになります。なお、妻からすれば、遺言が無効である方が有利ではありますが、仮に有効であっても、遺留分侵害額請求をすれば半分はもらえるということになります。

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2020年05月27日

過大還付された府民税1502万円使い切った男性…代理人弁護士「市のミス原因、返還義務ない」(2020年5月27日のニュース)

 「読売新聞オンライン」によれば、大阪府摂津市が、60歳代の男性に2018年度の府民税1502万円を過大に還付していたことから、市が返還を求めたものの、男性の代理人弁護士は「市のミスが原因。請求された時点で使い切っており、法律上、返還義務はない」と主張している、とのことです。

 まず、このような過大な還付が銀行振込で行われた場合の、振り込まれた方(口座名義人)と銀行との関係ですが、振込依頼人(本件で言えば摂津市)と口座名義人との間に振込の原因となる法律関係があるかどうかにかかわらず、口座名義人は、銀行に対して、振込金額相当の普通預金債権を取得します。したがって、預金の引き出しは、銀行との関係では問題ありません。
 次に、過大な還付金を受け取った方と摂津市との関係ですが、これは、過大な金額である以上、受け取った方がこのお金を持っておく法律上の理由がありませんので、受け取った方は、「不当利得」として、摂津市に受け取ったお金を返還する必要があります。
 もっとも、不当利得による返還については、法律上の理由がない「利得」であることを知らなかった場合には、現在、利益が残っている限度(これを「現存利益」と言います。)で返還すればよい(=現存利益がなければ返還しなくてよい)というルールがあります。例えば、レストランで「普通盛り」の食事を注文したところ、お店が間違って「大盛り」で提供してきて、それに気づかず全部食べてしまったような場合、大盛り分を食べたことは、法律上の理由がない「利得」にはなりますが、知らずに食べきって現存利益が残っていない以上、何も返還(お金による清算も含む)しなくてよいという結論になります。
 今回の件でも、男性の代理人弁護士が「請求された時点で使い切っており、法律上、返還義務はない」と主張しているのは、要するに、不当利得だと知らずにすべてお金を使い切って現存利益がないので、返還する必要はないという主張かと思われます。
 では、この主張が通るかどうかですが、2つクリアしなければならない問題があります。
 1つ目は、そもそも、本当に不当利得だと知らなかったのか、という問題です。過大であった額が少額であれば、確かに「過大とは知らなかった」ということもあるでしょうが、1502万円というのは、「知らなかった」で通すには金額が大きすぎるように思います。したがって、実際は、過大であると知っていたということになれば、当然、過大な還付分全額(および利息)を摂津市に返還する必要があります。
 2つ目は、仮に、本当に不当利得だと知らなかったとして、現存利益はないのか、という問題です。食べ物であれば、食べきってしまえば現存利益はないということになりますが、お金に関しては、お札そのものに意味があるのではなく、「〇〇円という価値」に意味があります(例えば、お金を両替しても現存利益は当然残っています)。そして、口座に誤って振り込まれた1502万円を引き出して実際に何かに使っていたとしても、そのおかげで、自分が元々有していた他の預貯金や資産などが減らないままキープできたとなるのが通常ですので、「価値としてのお金」は基本的には現存していることになります。したがって、仮に不当利得だと知らなかったとしても、やはり、現存利益としての金銭を返還すべきということになります。

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posted by 上田孝治 at 11:17 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年05月23日

《宅建試験対策13》譲渡制限特約(債権譲渡)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)改正前の民法では、債権者と債務者との間で、債権譲渡を禁止するなどの譲渡を制限する特約をしていた場合、原則として債権譲渡は「無効」(譲渡自体の効力を認めない)であり、例外として、譲受人が、譲渡制限特約について「善意かつ無重過失」であれば、債権譲渡は「有効」になるとされていました。
 しかしながら、改正により、譲渡制限特約があった場合でも、譲受人の認識(善意・悪意・過失の有無)と関係なく、債権譲渡は「有効」となります。
 ただし、せっかく譲渡制限特約を定めた債務者の保護のために、譲受人が特約について「悪意または重過失」である場合は、債務者は譲受人に対して履行(支払いなど)を拒否できることになりました。債権譲渡自体が「無効」になるのではなく、譲渡は「有効」で、債務者が譲受人に「履行拒否」できるという仕組みに変わったところがポイントです。
 ただ、こうなると、債務者が、新しい債権者(譲受人)にも元の債権者(譲渡人)のどちらにも履行をしないという事態(いわばデッドロック状態)が生じます。そこで、このような事態にならないように、譲受人が、債務者に対して、元の債権者(譲渡人)に履行するよう催告し、それでも債務者が履行しなければ、債務者は新しい債権者(譲受人)からの履行を拒めなくなるという規定も設けられました。
 なお、譲渡制限特約に反した債権譲渡も「有効」になるという改正ルールの例外として、「預貯金債権」については、譲受人が特約について「悪意または重過失」であれば(実際上は、預貯金債権なので、少なくとも重過失は認められると思われます。)、債権譲渡自体が「無効」となることも知っておきましょう。

b)譲渡制限特約のついた債権が強制執行により差し押さえられた場合、改正前の条文には何も規定がありませんでしたが、最高裁により、債務者は、差押債権者に対して譲渡制限特約を対抗できない、つまり、強制執行を「拒めない」とされていました。
 改正後は、この判例ルールが条文で規定されることになりました。判例ルールと同じ内容にするという改正ですので、実質的な変更はありませんが、知識として押さえておきましょう。


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2020年05月21日

販売預託商法、原則禁止へ 消費者庁、検討会で合意(2020年5月20日のニュース)

 「YAHOO! ニュース」(共同通信)によれば、消費者庁の有識者委員会が、いわゆる預託商法について、原則禁止の方向で制度を見直すことで合意し、新しい規制の枠組みを消費者庁が今後詰め、2021年の通常国会での預託法などの改正を目指す、とのことです。 

 いわゆる「預託商法」としては、かつては、豊田商事事件があり、その後、八葉物流事件、近未来通信事件、ふるさと牧場事件、安愚楽牧場事件、ジャパンライフ事件、ケフィア事業振興会事件など、実に多くの消費者被害を生じさせてきました。私自身も、これらの事件に代理人として関わったこともありますし、これら以外の預託商法事件にもいくつも関わってきました。
 元々、預託商法に関しては、「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」(預託法)という「スーパーざる法」がありました。具体的には、規制対象が政令で指定された「特定商品」(宝石類、自動販売機などの9種類のみ)に限られ、規制内容としても、@概要書面および契約書面の交付、A重要な事項についての不実告知、故意に事実を告げない行為の禁止、B威迫する言動を交えた勧誘や、契約解除の妨害行為の禁止、C預かった商品や利益の支払い拒否や、不当に遅延させる行為の禁止、D財務関係書類の閲覧請求権などに限られ、参入規制(登録制など)が全くないという「ざる」っぷりでした(そりゃ、預託商法被害も多発するでしょうよ・・・)。
 預託商法による消費者被害は、だいたいパターンが決まっていて、「超低金利でお困りでしょう。高配当のいい話がありますよ」と消費者(特に、預金の高利子時代を体感してきた高齢者)を勧誘し、出資名目でお金を出させ、しばらくの間は、当初約束していたとおりに配当的なものを支払いますので、消費者は、その期間で「まともな商法」だと信じ込まされるわけです。こうして信じ込まされたあたりのタイミングで、「もう少し追加してはどうですか?」と、消費者に資金を追加させますが、しばらく経ったころに、配当的なものの支払いが徐々に減額あるいは滞りはじめます。消費者から、「どうなっているのか」と問い合わせがあれば、もっともらしい理由をつけて、「〇月まで待ってください」などと言って時間を引き延ばし、信じ込まされている健気な消費者が言われたとおりに待っていると、今度は連絡すらつかなくなり、多額の被害が確定するというパターンです。
 ということで、預託商法を規制すべく、消費者庁が、2020年2月から「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」を開催し、今般、原則禁止の方向で制度を見直すことで合意したという流れです。当初、消費者庁自身はあまり規制に乗り気ではなかったようなので、このような検討委員会の方向性自体はたいへんよかったと思いますが、今後の具体的な制度設計の場面で、実質的に骨抜きということにならないように、法制化の際には厳しく目を光らせなければなりません。



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posted by 上田孝治 at 15:45 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年05月16日

《宅建試験対策12》保証契約後の保証人保護(多数当事者の債権・債務)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)保証契約をした後の保証人保護ルールの1つ目として、主債務者から委託を受けて保証人となった者(個人・法人いずれでもOK)から請求があった場合、債権者は、その保証人に対して、主債務の履行状況に関する情報(不履行の有無、残額、期限到来している額)を提供しなければならないという規定が、改正により新設されました。
 これは、主債務者の支払いが遅れている場合に、保証人としてできるだけ早く代わりに支払って、遅延金などが膨らむのを防ぐためです。
 もっとも、この債権者に課せられた情報提供義務に債権者が違反した場合の効果は、民法上特に明記されていません。したがって、債権者の情報提供義務違反があった場合、保証人は、債務不履行一般の規定に基づいて損害賠償請求などができるということになります。

b)保証契約をした後の保証人保護ルールの2つ目として、主債務者が、支払いができなくなって期限の利益を喪失した場合、債権者は、期限の利益の喪失を知ったときから2ヶ月以内に、保証人(委託の有無を問いませんが、個人に限ります)にその旨を通知しなければならないという規定が、改正により新設されました。
 この規定も、個人保証人ができるだけ早く代わりに支払って、遅延金などが膨らむのを防ぐためです。
 そして、仮に、債権者がこの情報提供(通知)義務に違反して通知を怠った場合、債権者は、保証人に、期限の利益喪失から通知までの遅延損害金を請求できないという効果が規定されています。


保証契約後の保証人保護・表1.PNG



保証契約後の保証人保護・表2.PNG



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