カテゴリ

2020年07月28日

不動産取引時の重要事項説明の対象として、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を追加

 大規模水害が頻発する中、不動産取引に際しては、水害リスクについての情報が重要な要素となっています。そこで、国土交通省は、2019年7月に、不動産関連団体を通じて、不動産取引時にハザードマップを提示し、取引の対象となる物件の位置等について情報提供するよう協力を依頼していました。
 今般、宅建業法施行規則の改正を行い、売買・賃貸を問わず、重要事項説明の対象項目に「水害ハザードマップにおける対象物件の所在地」を追加し、説明が義務づけられることになりました。施行日は、2020(令和2)年8月28日(金)です。
 なお、ガイドラインも改正され、具体的な説明方法として
 @水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すこと
 A市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと
 Bハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと
 C対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること
などが追加されました。


posted by 上田孝治 at 09:33 | TrackBack(0) | 不動産・宅建コラム

2020年07月24日

《宅建試験対策21》賃借物の修繕と一部滅失等による賃料の減額に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)賃貸借契約において、賃貸人は、賃借人に対して、目的物を使用収益させる義務を負っており、その結果として、必要な修繕をする義務を負うことになります。
 この点、「賃借人」の責めに帰すべき事由によって賃借物の修繕が必要となった場合にまで賃貸人が修繕義務を負うかについては、改正前は規定がありませんでした。
 しかし、改正により、「賃借人」の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合は、賃貸人は修繕義務を負わないことになりました。

b)賃貸借契約において賃借物を修繕できるのは、本来的には賃借物の管理権限を有する賃貸人だけのはずです。したがって、改正前は、「賃借人」が修繕できる場合についての規定はありませんでした。
 しかし、改正により、例外的に賃借人が修繕できる場合(賃借人の修繕権限)が2つ認められました。1つ目は、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときで、2つ目は、急迫の事情があるときです。
 なお、修繕が必要となった理由が、賃借人の責めに帰すべき事由によるかどうかを問わず、これらの2つの賃借人による修繕は可能です。もっとも、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合(=「賃貸人」に修繕義務がない場合)に、賃借人が修繕を行っても、賃貸人に対する費用償還請求権は発生しません。

c)賃借物の一部滅失などによって、賃借物の利用ができなくなった場合の賃料の扱いについて、改正前は、賃借人の過失によらずに賃借物が「一部滅失」したときは、賃借人は、滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を「請求」できるとしていました。
 これに対して、改正後は、賃借物の一部滅失の場合だけでなく、その他の事由により「使用収益できなくなった」場合も、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、使用収益できなくなった部分の割合に応じて、「当然に」(=請求によってではなく)減額されることになりました。

賃借物の修繕・表1.PNG


賃借物の修繕・表2.PNG

2020年07月19日

《宅建試験対策20》賃貸借契約の存続期間、不動産の賃貸人たる地位の移転に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)賃貸借契約において期間を定める場合の期間の上限について、改正前は20年とされていました。しかし、20年を超えるような期間のニーズがあることから、改正により、上限は50年となりました。
 なお、期間を定めない賃貸借契約は引き続き認められますし、「最短」期間(下限)についての制限がないことは改正前後で変わりません。

b)賃貸不動産の所有権移転に伴って、賃貸人の地位が移転するケースに関しては、改正前は直接の条文は存在せず、判例により様々なルールが定められていました。
 まず、不動産賃貸借契約における賃貸人の地位の移転については、特段の事情のある場合を除き、「賃借人の承諾を必要とせず」、旧所有者と新所有者間の契約によってすることができるとされていました。
 また、「対抗要件を備えた」賃借権が設定された不動産の譲受人は、「特段の事情がない限り」、譲渡人から賃貸人の地位を承継するとされていました。この点、譲渡人と譲受人との間で、賃貸人の地位を譲渡人に留保する合意をしたとしても、直ちに「特段の事情あり」とは言えないとして、賃貸人の地位は移転するというのが判例の考え方(留保の合意の効力を否定する考え方)でした。これは、賃貸人の地位が移転しないことになると、賃借人は知らぬ間に転借人の立場に立たされ、地位が不安定になるからという理由です。
 改正により、これらの判例ルールをおおむね条文化しましたが、いくつか異なる内容もあります。以下で、改正後のルールについて賃借人に対抗要件がない場合とある場合とで分けて説明します。
 まず、賃借人に「対抗要件がない」場合、不動産の譲渡があっても、原則として、譲受人は、賃貸人たる地位を引き継ぎません(「売買は賃貸借を破る」という考え方です)ので、譲受人は、賃借人に対して明け渡しを求めることができます。
もっとも、賃借人に対抗要件がない場合でも、譲渡人と譲受人との「合意」によって、賃貸人の地位を譲受人に引き継がせることは可能で、この際に、賃借人の承諾は、例外なく(この点は判例とは異なります)必要ありません。
 他方で、賃借人に「対抗要件がある」場合、不動産の譲渡があれば、原則として、賃貸人の地位も譲受人に移転することになります。
 もっとも、不動産の譲渡人と譲受人が、@賃貸人の地位を譲渡人に留保し、かつ、Aその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸するという「合意」をしたときは、例外的に、賃貸人の地位は、譲受人に移転しません。つまり、これまでの判例とは異なり、留保の合意の効力を認めました。結局、留保の合意があった場合、@譲渡人と譲受人の間では賃貸借関係が、譲渡人と賃借人との間では転貸借関係が成立することになります。
 この点、判例が留保の合意の効力を否定する理由としていた、賃借人が、転借人という不安定な地位におかれてしまうという点をケアするために、仮に、賃貸不動産の譲渡人と譲受人(その承継人を含む)との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人の地位が、譲受人に移転することにしました。よって、賃借人は、譲渡人と譲受人の賃貸借が終了した後も、引き続き、賃借人として不動産を利用することができます。

賃貸借・表1.PNG


賃貸借・表2.PNG

2020年07月11日

《宅建試験対策19》使用貸借契約の成立と終了に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)使用貸借契約は、ただで(無償で)物を貸す契約のことで、無償契約ゆえに、賃貸借契約と比べて、借主の立場が弱いのが特徴です。
 そして、改正前は、使用貸借契約が「成立」するためには、物の引渡しが必要とされており、合意だけではそもそも使用貸借契約は成立しませんでした(このような契約を「要物契約」といいます)。
 しかし、改正によって、使用貸借契約は「諾成契約」となり、当事者の合意だけで契約が成立することになりました。つまり、「ただで貸すよ」という口約束をしただけでも、使用貸借契約は成立し、貸主は、借主に対して物を引き渡す義務を負うことになります。
 とは言え、使用貸借契約は無償契約ですので、口約束をしただけで「強い」拘束力を認めるのは貸主にかわいそうであることから、@書面によらない使用貸借であれば、A物の受け渡しがあるまでの間、貸主は契約を解除することができます。これは、同じく無償契約である「書面によらない贈与」の解除権と同様の趣旨の規定と言えます。

b)使用貸借における借主は、ただで物を借りて使用収益できる立場にあります。
 そして、使用貸借の借主については、改正前から、借主の死亡によって契約が終了する(つまり、使用借権は相続されない)旨の規定がありました。
 これに加えて、改正後は、使用貸借契約が書面でされたかどうか、使用期間や使用収益をする目的が定められたかどうかにかかわらず、「借主の側から」は、いつでも契約を解除できる旨の規定が新設されました。


使用貸借・表1.PNG


使用貸借・表2.PNG

2020年07月04日

《宅建試験対策18》売主の担保責任(売買契約)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)他人の物を売買契約の目的とした場合、物権的には(所有権移転という点)それだけでは効力は生じませんが、契約としては(債権的には)有効で、売主は、真の所有者から権利を取得して買主に移転しなければなりません。では、売買契約の目的物が「全部」他人の物であった場合(全部他人物売買)に、売主が真の所有者から権利を取得できずに、買主に権利を移転できないことになったらどうなるでしょうか。
 改正前は、このようなケースでは、買主は契約の解除をすることができ、善意の買主については、損害賠償請求をすることもできるという売主の担保責任の規定がありました。
 改正後は、このような全部他人物売買の特別の規定は削除され、契約全般に共通するルールである債務不履行の中の履行不能に基づく責任で処理されることになります。したがって、買主は、売主に対して、債務不履行(履行不能)に基づいて契約の解除や損害賠償請求をすることになります。

b)物の種類・品質・数量が契約の内容に適合しない場合(「物」の不適合)、目的物に地上権や抵当権などが実はついていたケース・あるはずの敷地利用権が実際にはなかったケース・「一部」他人物売買のケースのような、権利が契約の内容に適合しない場合(「権利」の不適合)、改正前は、@一部他人物の場合、A数量不足・一部滅失の場合、B地上権等がある場合、C抵当権等がある場合、D瑕疵がある場合という類型ごとに売主の責任を細かく定めていました。
 これに対して、改正後は、物や権利の不適合全般について、本来想定されていた契約の内容(あるべき契約の内容)から見て、実際に売主によってされた履行があるべき契約内容に適合していない場合の共通ルールとして売主の担保責任を定めています。責任追及の方法は4つ認められており、あるべき契約内容に適合していないことから、債務不履行に基づく@契約の解除、A損害賠償請求ができることに加えて、売買契約の特別ルールとしてB追完(ついかん)請求、C代金減額請求が認められています。
 このうち、B追完請求というのは、あるべき契約内容に適合させるように求める(100点満点にするように求める)ことで、具体的には、修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを求めることができます。具体的な追完方法の選択権は、基本的には買主にありますが、買主に不相当な方法を課すものでなければ、売主の方で、異なる方法による追完をすることもできます(例えば、買主が代替物の引渡しを求めたのに対して、売主の判断で修理対応をするような場合です。)。
 また、C代金減額請求は、適合していない部分に応じて代金を安くするように求めることです(例えば、不適合があるので70点だから、代金を3割減額するように求めることです。)。もっとも、代金減額請求は、原則として、買主が履行の追完の催告をしたにもかかわらず、追完されない場合にはじめてできることになっています。つまり、原則として、追完請求を先行しなければ代金減額請求はできません。

c)売主の担保責任が発生する場合に、買主は、いつまでに、どのよう方法で売主に責任追及しなければならないかについて、改正前の担保責任のうち、瑕疵担保責任では、@買主が瑕疵を知った時から1年以内に権利行使(除斥期間)をし、かつ、A一般的な消滅時効の期間内(つまり、引き渡しから10年以内)に権利行使をしなければならないとされていました。
 これに対して、改正後は、「品質・種類」に関する不適合については、@売主が不適合について悪意や重過失の場合を除き、買主が不適合を知った時から1年以内に「通知」(不適合の種類や範囲を伝えればそれで足り、権利行使までの必要はありません。)し、かつ、A一般的な消滅時効の期間内(知った時から5年以内、引き渡しから10年以内)に権利行使をしなければなりません。他方で、「数量・権利」の不適合については、「通知」の必要はなく、単に、一般的な消滅時効の期間内(知った時から5年以内、引き渡しから10年以内)に権利行使をすればよいこととされています。


売主の担保責任・表1.PNG


売主の担保責任・表2.PNG

2020年06月20日

《宅建試験対策17》解除・危険負担(契約総則)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)債務不履行があった場合に、債権者が取ることができる手段として、契約関係を消滅させて自分自身の債務をなくす「契約の解除」と、債務不履行による損害を相手方に支払わせる「損害賠償請求」の2つがあります。
 この2つのうち、契約を解除するための要件として、改正前は、損害賠償請求と同様に「債務者の帰責事由」が必要とされていました。
 しかし、改正後は、契約の解除に「債務者の帰責事由」は不要(=債務者に落ち度がなくても、債権者は、契約を解除できる)とされました。もっとも、「債権者」の帰責事由による債務不履行の場合まで、債権者による解除はできません。なお、損害賠償請求については、債務者の帰責事由が必要なことは改正前後で変わりません。
 また、改正前から、判例によって、債務不履行の部分がわずかの場合や、付随的義務の不履行については契約の解除が認められていませんでした。そこで、改正により、この判例の考え方を前提に、債務不履行が「軽微」なときは解除ができないことが明文化されました(したがって、この点は、実質的な変更ではありません)。

b)双務契約(契約当事者双方が債務を負う契約)において、一方の債務が当事者双方の帰責事由によらずに履行不能となった場合に、履行不能になっていない方の債務(反対債務)をどのように扱うかというのが「危険負担」の問題です。
 この点、改正前は、原則として、反対債務も「消滅」するとしつつ、特定物の売買契約などの場合には、例外的に反対債務は消滅しない(反対債務を履行しなければならない)とされていました。
 ところが、aで述べたとおり、解除の要件に関して、債務不履行で契約を解除するために、債務者の帰責事由はいらないという改正がなされました。そうであれば、危険負担のケースにおいても、債権者は契約を解除して、契約関係を消滅させることができることになります。つまり、改正「前」の危険負担の効果(原則として、反対債務が消滅する)と改正「後」の解除の効果(解除により反対債務を消滅させる)は、ダブってしまうわけです。
 そこで、改正後は、反対債務を消滅させる役割は「解除」に任せ、「危険負担」は、反対債務の「履行を拒絶」できるという効果に変わりました。
 また、改正前の危険負担の例外ルール(特定物の契約などの場合)によると、例えば、中古住宅(=特定物)の売買契約をして、まだ引き渡しを受ける前の段階で、天災により住宅が滅失したような場合に、買主は売買代金を支払わないといけない(反対債務を履行しなければならない)という結論になりますが、このような結論が妥当ではないという意見が強くありました。そこで、改正により、この特定物の契約に関する例外ルールも削除されることになりました。
 結局、双務契約において、一方の債務が当事者双方の帰責事由によらずに履行不能になった場合、債権者は「解除」により契約関係を消滅させることができますが、解除する前であっても、危険負担の規定によって、自らが負っている反対債務の履行を拒むことができることになったわけです。



解除・危険負担・表.PNG

2020年06月19日

《不動産・マンション管理》新型コロナウイルス対応のためのサイト紹介(随時更新)

新型コロナウイルス感染症による影響を受けた不動産業者が活用できる、「中小企業・小規模事業者に対する政府系金融機関等による融資・資本増強」や「中小企業・小規模事業者に対する民間金融機関による融資等」といった支援メニューの概要とリンクがまとめられたもの


不動産業者の事務所や案内所等(モデルルーム・現地販売所等を含む。)取引物件の現場において、各事業者の取引等の実態に応じた新型コロナウイルス感染予防対策を行う際の基本的事項について、参考として整理したもの


  【賃貸借契約の当事者向け】
  1. 新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少し,現在借りている建物の家賃が払えなくなってしまいました。すぐに退去しなければならないのですか。
  2. 新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し,今後,家賃を払い続ける見通しが立ちません。家賃の減額や支払猶予等について,オーナーと交渉することはできないのでしょうか。
  3. テナントが新型コロナウイルス感染症の影響により営業を休止することとなった場合,賃料が減額されることにはならないのですか。

  【マンション管理組合向け】
集会の開催について、ITをどのように活用できるか、ITを活用した理事会開催の方法などについてのQ&Aがまとめられています

  【宅建業者向け】
  • 当面の間、専任の宅地建物取引士が在宅勤務(テレワーク)をしている場合であっても、宅建業法第31条の3第1項の規定に抵触しないものとして取り扱うこと
  • 在宅勤務(テレワーク)を実施した場合における宅建業法施行規則の規定による標準媒介契約約款の規定のうち、@依頼者への業務の処理状況の報告方法、A媒介契約の更新時の申出方法に関する考え方

「新型コロナウイルス感染症に係る対応について(補足その2)」(2020年4月17日付)《国土交通省土地・建設産業局 不動産業課長 不動産市場整備課長》
  【賃貸事業者やテナント事業者向け】
  • テナントの賃料を免除した場合の損失の税務上の損金算入について
  • 国税・地方税・社会保険料の猶予措置について
  • 固定資産税等の減免措置について
  • セーフティネット保証5号の対象業種への追加について
  • 政府系金融機関、民間金融機関による実質無利子・無担保の融資
  • 新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が前年同月比で50%以上減少している事業者に対する持続化給付金(法人は200万円以内、個人事業者等は100万円以内)の支給
  • 税・社会保険・公共料金の猶予

  • 住宅ローン減税の適用要件の弾力化(住宅ローン減税の控除期間13年間の特例措置、既存住宅を取得した際の住宅ローン減税の入居期限要件)
  • 次世代住宅ポイント制度の申請期限

  【マンション管理組合向け】
  • 組合員に対し、総会会場に来場することなく、議決権行使書又は委任状により、議決権を行使してもらうことを、通知又は個別連絡により勧める
  • 通常総会を開催せずに決議を行う方法として、@区分所有者全員の承諾がある場合の書面又は電磁的方法による決議、A決議すべき事項について、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意のいずれかの方法がある
  • 管理規約に通常総会の開催を延期して行う規定がない管理組合であっても、緊急時の対応として、やむを得ず期間を超えて総会を延期せざるを得ないと判断する場合には、理事会で通常総会の開催を延期することを決議する方法が考えられる


続きを読む