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2020年08月15日

《宅建試験対策24》遺留分に関する民法改正

 遺留分(いりゅうぶん)は、法定相続人のうち、配偶者・子・直系尊属のみに認められた、最低限度の相続分の取り分のことになります。最低限度の取り分ですので、相続における力関係を図示すると以下のようになります。
     遺留分 > 遺言・生前贈与 > 法定相続
 遺留分を侵害された配偶者・子・直系尊属が、実際に遺留分権を行使して取り分を確保するかどうかは各自の自由ですが、行使することを、改正前は、「遺留分減殺請求」(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)と呼んでいました。そして、遺留分権者が遺留分減殺請求を行うと、請求の対象となった不動産のような相続財産は共有となりますので、例えば、遺留分を侵害するような不動産の遺贈や贈与があれば、遺留分権者(配偶者・子・直系尊属)と、遺贈や贈与で手に入れた人(受遺者や受贈者)との共有不動産になってしまいます。しかし、遺留分減殺請求によって不動産が共有状態になれば、その後の不動産の処分などが非常に面倒なことになるなど、デメリットが多くありました。
 そこで、改正法は、遺留分が侵害された場合には、侵害額に相当する「金銭」の支払いを請求することができる、つまり、「金銭債権」として扱うことになりました。したがって、遺留分を侵害する遺贈や贈与の対象が不動産であったとしても、遺留分の請求によって不動産自体が共有になるわけではなく、侵害された分に相当する額の金銭である「○○万円を支払え」という内容の権利になります。このような遺留分に関する請求の金銭債権化に合わせて、用語としても、「遺留分減殺請求」ではなく、「遺留分侵害額請求」という言葉に変わっています。


遺留分・表.PNG

2020年08月08日

《宅建試験対策23》配偶者の居住の権利に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)被相続人の配偶者が、被相続人の遺産である建物に相続開始の時に住んでいた場合、被相続人が亡くなった後も、引き続き、その建物に居住したいというケースがよくあります。
 そのための方法として、例えば、配偶者がこの建物の「所有権」を遺産分割で取得して住み続けることはもちろんできますが、居住建物の評価額が高額となることで、配偶者がその他の遺産(預貯金など)をあまり取得できない可能性が出てきます。
 そこで、改正民法では、居住建物の「所有権」ではなく、無償での「使用収益権」のみを配偶者に取得させ(所有権そのものよりも評価額は下がります。)、他方で、「使用収益できないという負担の付いた所有権」を配偶者以外の者に取得させるという仕組みを新たに作りました。これが「配偶者居住権」です。配偶者としては、建物に住み続けられればそれでよく、「所有権」までは必要がないわけですから、居住建物の「使用収益権」のみを取得して住み続け、その分、預貯金などのその他の遺産を多めに取得することができます。
 配偶者居住権は、何もせずに当然に成立するものではなく、遺産分割、遺贈、死因贈与によってはじめて成立し、居住していた建物の「全部」について、原則として、配偶者が死ぬまでの間(終身)、無償で使用や収益できる権利です。「収益」をする権利も含まれますので、配偶者は、建物を賃貸に出すことも可能です。
 また、配偶者居住権は、「登記」(建物の「引渡し」ではダメです。)をすることによって、居住建物の物権を取得した第三者にも対抗できます。この登記の登記義務者は、建物の所有者ですので、民法の規定で、居住建物の所有者は、配偶者居住権を取得した配偶者に対し、配偶者居住権の設定の登記を備えさせる義務を負うとされています。

b)被相続人の配偶者は、被相続人の遺産である建物に相続開始の時に無償で居住していた場合に、一定期間、居住建物を無償で使用する権利を与えられます。これが「配偶者短期居住権」と言われるもので、改正民法によって新設された規定です。
 一定期間というのは、@居住建物について配偶者を含む共同相続人間で遺産の分割をすべき場合は、「遺産の分割により居住建物の帰属が確定した日」または「相続開始の時から6ヶ月を経過する日」のいずれか遅い日までで、A遺言がある場合など、@以外の場合は、居住建物の取得者が、配偶者短期居住権の消滅の申入れをした日から6ヶ月を経過する日までとなっています。
 配偶者短期居住権は、要件を充たせば、当然に発生する権利であり、遺産分割・遺贈・死因贈与によってはじめて成立することになる配偶者居住権とは大きく異なるものです。
 また、配偶者短期居住権は、一定期間、建物を無償で「使用」する権利ですので、「収益」は認められていませんし、登記をすることもできません。


配偶者居住権・表1.PNG

2020年07月31日

《宅建試験対策22》請負の報酬と担保責任に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)請負は、仕事の「完成」に対して報酬を支払うという内容の契約です。では、仕事が完成しないまま請負契約が終了した場合(仕事が途中で終わった場合)に、仕事の一部がすでに完了していて、注文者がその部分(履行済みの仕事)によって利益を受けるようなケースで、報酬についてはどう考えればいいでしょうか。   
 この点、改正前は、工事全体が未完成の間に、注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合、工事内容が可分で、当事者が既施工部分に利益を有するときは、既施工部分については契約を「解除できず」、未施工部分について契約の「一部解除」ができるに過ぎないとした判例がありました。したがって、全体としては完成していなくても、既施工部分は解除ができないことから、既施工部分の報酬を支払わなければならないことになっていました。
 改正により、この判例の考え方がおおむね条文化されることになりました。具体的には、仕事全体が完成しないまま、請負契約が、以下の2つのケースにより途中で終了したものの、注文者が履行済みの仕事によって利益を受ける場合、その部分は仕事が「完成」したものと扱い(いわば「一部完成」)、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬請求ができることになりました。
《ケース@》 注文者に帰責事由がなく、仕事の完成ができなくなった場合(つまり、双方に帰責事由がない、もしくは請負人に帰責事由がある場合)。このうち、請負人に帰責事由がある場合は、別途、債務不履行に基づく損害賠償の問題が生じます。
 なお、注文者の帰責事由によって仕事の完成ができなくなった場合、請負人は、報酬「全額」を請求できますが、自分の債務を免れたことによる利益(かからなくなった材料代など)は注文者に償還する必要があります。この処理は、請負の規定ではなく、危険負担に基づくもので、改正前も同様に解されていました。
《ケースA》 請負が仕事の完成前に解除された場合。もっとも、請負人や注文者に帰責事由がある場合は、別途、債務不履行に基づく損害賠償の問題が生じます。

b)請負人の担保責任について、改正前は、仕事完成「後」の請負人の特別の責任として担保責任が定められており、具体的には、注文者は、修補請求、解除、損害賠償請求ができるとされていました。もっとも、建物などの土地の工作物については、契約目的を達成できないような瑕疵があっても解除できないとされていました。
 さらに、担保責任の期間制限として、原則、引渡もしくは仕事終了時から1年、土地工作物は引渡後5年(非堅固)もしくは10年(堅固)というものがありました。
 これに対して、改正により、請負契約の種類や品質が不適合であった場合、仕事の完成前後を問わず、請負人の契約不適合責任として、売買の担保責任の規定を準用することになりました。具体的には、注文者は、追完請求(修補など)、報酬減額請求、解除、損害賠償請求ができ、建物などの土地の工作物であっても要件を満たせば解除ができることになりました。
 また、期間制限についても売買と同様で、請負人が悪意・重過失の場合を除き、注文者が知った時から1年以内に「通知」をすることで担保責任を追及できる権利が保存され、一般的な消滅時効の期間内(知った時から5年以内、引渡もしくは仕事終了時から10年以内)に権利行使すればよいことになりました。
 以上のとおり、改正前の請負の担保責任における独特のルールはすべてなくなり、改正後は、売買の担保責任と同様に考えればよいため、試験対策上は楽になります。


請負・表1.PNG
請負・表2.PNG


請負・表3.PNG

2020年07月24日

《宅建試験対策21》賃借物の修繕と一部滅失等による賃料の減額に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)賃貸借契約において、賃貸人は、賃借人に対して、目的物を使用収益させる義務を負っており、その結果として、必要な修繕をする義務を負うことになります。
 この点、「賃借人」の責めに帰すべき事由によって賃借物の修繕が必要となった場合にまで賃貸人が修繕義務を負うかについては、改正前は規定がありませんでした。
 しかし、改正により、「賃借人」の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合は、賃貸人は修繕義務を負わないことになりました。

b)賃貸借契約において賃借物を修繕できるのは、本来的には賃借物の管理権限を有する賃貸人だけのはずです。したがって、改正前は、「賃借人」が修繕できる場合についての規定はありませんでした。
 しかし、改正により、例外的に賃借人が修繕できる場合(賃借人の修繕権限)が2つ認められました。1つ目は、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときで、2つ目は、急迫の事情があるときです。
 なお、修繕が必要となった理由が、賃借人の責めに帰すべき事由によるかどうかを問わず、これらの2つの賃借人による修繕は可能です。もっとも、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合(=「賃貸人」に修繕義務がない場合)に、賃借人が修繕を行っても、賃貸人に対する費用償還請求権は発生しません。

c)賃借物の一部滅失などによって、賃借物の利用ができなくなった場合の賃料の扱いについて、改正前は、賃借人の過失によらずに賃借物が「一部滅失」したときは、賃借人は、滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を「請求」できるとしていました。
 これに対して、改正後は、賃借物の一部滅失の場合だけでなく、その他の事由により「使用収益できなくなった」場合も、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、使用収益できなくなった部分の割合に応じて、「当然に」(=請求によってではなく)減額されることになりました。

賃借物の修繕・表1.PNG


賃借物の修繕・表2.PNG

2020年07月19日

《宅建試験対策20》賃貸借契約の存続期間、不動産の賃貸人たる地位の移転に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)賃貸借契約において期間を定める場合の期間の上限について、改正前は20年とされていました。しかし、20年を超えるような期間のニーズがあることから、改正により、上限は50年となりました。
 なお、期間を定めない賃貸借契約は引き続き認められますし、「最短」期間(下限)についての制限がないことは改正前後で変わりません。

b)賃貸不動産の所有権移転に伴って、賃貸人の地位が移転するケースに関しては、改正前は直接の条文は存在せず、判例により様々なルールが定められていました。
 まず、不動産賃貸借契約における賃貸人の地位の移転については、特段の事情のある場合を除き、「賃借人の承諾を必要とせず」、旧所有者と新所有者間の契約によってすることができるとされていました。
 また、「対抗要件を備えた」賃借権が設定された不動産の譲受人は、「特段の事情がない限り」、譲渡人から賃貸人の地位を承継するとされていました。この点、譲渡人と譲受人との間で、賃貸人の地位を譲渡人に留保する合意をしたとしても、直ちに「特段の事情あり」とは言えないとして、賃貸人の地位は移転するというのが判例の考え方(留保の合意の効力を否定する考え方)でした。これは、賃貸人の地位が移転しないことになると、賃借人は知らぬ間に転借人の立場に立たされ、地位が不安定になるからという理由です。
 改正により、これらの判例ルールをおおむね条文化しましたが、いくつか異なる内容もあります。以下で、改正後のルールについて賃借人に対抗要件がない場合とある場合とで分けて説明します。
 まず、賃借人に「対抗要件がない」場合、不動産の譲渡があっても、原則として、譲受人は、賃貸人たる地位を引き継ぎません(「売買は賃貸借を破る」という考え方です)ので、譲受人は、賃借人に対して明け渡しを求めることができます。
もっとも、賃借人に対抗要件がない場合でも、譲渡人と譲受人との「合意」によって、賃貸人の地位を譲受人に引き継がせることは可能で、この際に、賃借人の承諾は、例外なく(この点は判例とは異なります)必要ありません。
 他方で、賃借人に「対抗要件がある」場合、不動産の譲渡があれば、原則として、賃貸人の地位も譲受人に移転することになります。
 もっとも、不動産の譲渡人と譲受人が、@賃貸人の地位を譲渡人に留保し、かつ、Aその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸するという「合意」をしたときは、例外的に、賃貸人の地位は、譲受人に移転しません。つまり、これまでの判例とは異なり、留保の合意の効力を認めました。結局、留保の合意があった場合、@譲渡人と譲受人の間では賃貸借関係が、譲渡人と賃借人との間では転貸借関係が成立することになります。
 この点、判例が留保の合意の効力を否定する理由としていた、賃借人が、転借人という不安定な地位におかれてしまうという点をケアするために、仮に、賃貸不動産の譲渡人と譲受人(その承継人を含む)との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人の地位が、譲受人に移転することにしました。よって、賃借人は、譲渡人と譲受人の賃貸借が終了した後も、引き続き、賃借人として不動産を利用することができます。

賃貸借・表1.PNG


賃貸借・表2.PNG

2020年07月11日

《宅建試験対策19》使用貸借契約の成立と終了に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)使用貸借契約は、ただで(無償で)物を貸す契約のことで、無償契約ゆえに、賃貸借契約と比べて、借主の立場が弱いのが特徴です。
 そして、改正前は、使用貸借契約が「成立」するためには、物の引渡しが必要とされており、合意だけではそもそも使用貸借契約は成立しませんでした(このような契約を「要物契約」といいます)。
 しかし、改正によって、使用貸借契約は「諾成契約」となり、当事者の合意だけで契約が成立することになりました。つまり、「ただで貸すよ」という口約束をしただけでも、使用貸借契約は成立し、貸主は、借主に対して物を引き渡す義務を負うことになります。
 とは言え、使用貸借契約は無償契約ですので、口約束をしただけで「強い」拘束力を認めるのは貸主にかわいそうであることから、@書面によらない使用貸借であれば、A物の受け渡しがあるまでの間、貸主は契約を解除することができます。これは、同じく無償契約である「書面によらない贈与」の解除権と同様の趣旨の規定と言えます。

b)使用貸借における借主は、ただで物を借りて使用収益できる立場にあります。
 そして、使用貸借の借主については、改正前から、借主の死亡によって契約が終了する(つまり、使用借権は相続されない)旨の規定がありました。
 これに加えて、改正後は、使用貸借契約が書面でされたかどうか、使用期間や使用収益をする目的が定められたかどうかにかかわらず、「借主の側から」は、いつでも契約を解除できる旨の規定が新設されました。


使用貸借・表1.PNG


使用貸借・表2.PNG

2020年07月04日

《宅建試験対策18》売主の担保責任(売買契約)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)他人の物を売買契約の目的とした場合、物権的には(所有権移転という点)それだけでは効力は生じませんが、契約としては(債権的には)有効で、売主は、真の所有者から権利を取得して買主に移転しなければなりません。では、売買契約の目的物が「全部」他人の物であった場合(全部他人物売買)に、売主が真の所有者から権利を取得できずに、買主に権利を移転できないことになったらどうなるでしょうか。
 改正前は、このようなケースでは、買主は契約の解除をすることができ、善意の買主については、損害賠償請求をすることもできるという売主の担保責任の規定がありました。
 改正後は、このような全部他人物売買の特別の規定は削除され、契約全般に共通するルールである債務不履行の中の履行不能に基づく責任で処理されることになります。したがって、買主は、売主に対して、債務不履行(履行不能)に基づいて契約の解除や損害賠償請求をすることになります。

b)物の種類・品質・数量が契約の内容に適合しない場合(「物」の不適合)、目的物に地上権や抵当権などが実はついていたケース・あるはずの敷地利用権が実際にはなかったケース・「一部」他人物売買のケースのような、権利が契約の内容に適合しない場合(「権利」の不適合)、改正前は、@一部他人物の場合、A数量不足・一部滅失の場合、B地上権等がある場合、C抵当権等がある場合、D瑕疵がある場合という類型ごとに売主の責任を細かく定めていました。
 これに対して、改正後は、物や権利の不適合全般について、本来想定されていた契約の内容(あるべき契約の内容)から見て、実際に売主によってされた履行があるべき契約内容に適合していない場合の共通ルールとして売主の担保責任を定めています。責任追及の方法は4つ認められており、あるべき契約内容に適合していないことから、債務不履行に基づく@契約の解除、A損害賠償請求ができることに加えて、売買契約の特別ルールとしてB追完(ついかん)請求、C代金減額請求が認められています。
 このうち、B追完請求というのは、あるべき契約内容に適合させるように求める(100点満点にするように求める)ことで、具体的には、修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを求めることができます。具体的な追完方法の選択権は、基本的には買主にありますが、買主に不相当な方法を課すものでなければ、売主の方で、異なる方法による追完をすることもできます(例えば、買主が代替物の引渡しを求めたのに対して、売主の判断で修理対応をするような場合です。)。
 また、C代金減額請求は、適合していない部分に応じて代金を安くするように求めることです(例えば、不適合があるので70点だから、代金を3割減額するように求めることです。)。もっとも、代金減額請求は、原則として、買主が履行の追完の催告をしたにもかかわらず、追完されない場合にはじめてできることになっています。つまり、原則として、追完請求を先行しなければ代金減額請求はできません。

c)売主の担保責任が発生する場合に、買主は、いつまでに、どのよう方法で売主に責任追及しなければならないかについて、改正前の担保責任のうち、瑕疵担保責任では、@買主が瑕疵を知った時から1年以内に権利行使(除斥期間)をし、かつ、A一般的な消滅時効の期間内(つまり、引き渡しから10年以内)に権利行使をしなければならないとされていました。
 これに対して、改正後は、「品質・種類」に関する不適合については、@売主が不適合について悪意や重過失の場合を除き、買主が不適合を知った時から1年以内に「通知」(不適合の種類や範囲を伝えればそれで足り、権利行使までの必要はありません。)し、かつ、A一般的な消滅時効の期間内(知った時から5年以内、引き渡しから10年以内)に権利行使をしなければなりません。他方で、「数量・権利」の不適合については、「通知」の必要はなく、単に、一般的な消滅時効の期間内(知った時から5年以内、引き渡しから10年以内)に権利行使をすればよいこととされています。


売主の担保責任・表1.PNG


売主の担保責任・表2.PNG

2020年06月20日

《宅建試験対策17》解除・危険負担(契約総則)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)債務不履行があった場合に、債権者が取ることができる手段として、契約関係を消滅させて自分自身の債務をなくす「契約の解除」と、債務不履行による損害を相手方に支払わせる「損害賠償請求」の2つがあります。
 この2つのうち、契約を解除するための要件として、改正前は、損害賠償請求と同様に「債務者の帰責事由」が必要とされていました。
 しかし、改正後は、契約の解除に「債務者の帰責事由」は不要(=債務者に落ち度がなくても、債権者は、契約を解除できる)とされました。もっとも、「債権者」の帰責事由による債務不履行の場合まで、債権者による解除はできません。なお、損害賠償請求については、債務者の帰責事由が必要なことは改正前後で変わりません。
 また、改正前から、判例によって、債務不履行の部分がわずかの場合や、付随的義務の不履行については契約の解除が認められていませんでした。そこで、改正により、この判例の考え方を前提に、債務不履行が「軽微」なときは解除ができないことが明文化されました(したがって、この点は、実質的な変更ではありません)。

b)双務契約(契約当事者双方が債務を負う契約)において、一方の債務が当事者双方の帰責事由によらずに履行不能となった場合に、履行不能になっていない方の債務(反対債務)をどのように扱うかというのが「危険負担」の問題です。
 この点、改正前は、原則として、反対債務も「消滅」するとしつつ、特定物の売買契約などの場合には、例外的に反対債務は消滅しない(反対債務を履行しなければならない)とされていました。
 ところが、aで述べたとおり、解除の要件に関して、債務不履行で契約を解除するために、債務者の帰責事由はいらないという改正がなされました。そうであれば、危険負担のケースにおいても、債権者は契約を解除して、契約関係を消滅させることができることになります。つまり、改正「前」の危険負担の効果(原則として、反対債務が消滅する)と改正「後」の解除の効果(解除により反対債務を消滅させる)は、ダブってしまうわけです。
 そこで、改正後は、反対債務を消滅させる役割は「解除」に任せ、「危険負担」は、反対債務の「履行を拒絶」できるという効果に変わりました。
 また、改正前の危険負担の例外ルール(特定物の契約などの場合)によると、例えば、中古住宅(=特定物)の売買契約をして、まだ引き渡しを受ける前の段階で、天災により住宅が滅失したような場合に、買主は売買代金を支払わないといけない(反対債務を履行しなければならない)という結論になりますが、このような結論が妥当ではないという意見が強くありました。そこで、改正により、この特定物の契約に関する例外ルールも削除されることになりました。
 結局、双務契約において、一方の債務が当事者双方の帰責事由によらずに履行不能になった場合、債権者は「解除」により契約関係を消滅させることができますが、解除する前であっても、危険負担の規定によって、自らが負っている反対債務の履行を拒むことができることになったわけです。



解除・危険負担・表.PNG

2020年06月14日

《宅建試験対策16》相殺(債権の消滅)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)互いに債務を負っている当事者間において、相殺を行わない旨の特約(相殺禁止特約)がある場合、この当事者は、いずれも相殺をすることができません。
 もっとも、相殺するつもりで債権を譲り受けた者や債務を引き受けた者が、実は相殺禁止特約がついていたことを知らなかったというケースもあり得ます。
 そこで、改正前は、相殺禁止特約について「善意」の第三者には対抗できない、つまり特約を知らずに債権を譲り受けた者や債務を引き受けた者は相殺できるとされていました。これに対して、改正後は、特約について「善意かつ無重過失」の第三者には対抗できないとなりましたので、単に知らないだけでは第三者は保護されず、特約の存在について重過失がない場合にはじめて相殺できることになります。

b)不法行為や債務不履行によって損害が発生した場合、加害者(債務者)は、被害者(債権者)に対して損害賠償債務を負っていることになります。では、このようなケースにおいて、逆に、被害者(債権者)も、加害者(債務者)に対して、何らかの債務を負担している(例えば、加害者からお金を借りていたなど)場合、加害者(債務者)と被害者(債権者)の双方が互いに債務を負担していることになりますので、当然、相殺ができるようにも思われます。
 しかし、相殺は、互いの債務を計算上帳消しにすることですので、実際にはお金を支払わないという特徴があります。となると、損害賠償債務を負っている加害者(債務者)からの相殺を常に認めてしまうと、被害者(債権者)の懐には実際にお金は入ってこないことになり、被害者(債権者)が気の毒なわけです(このような価値判断のことを、「被害者に現実の賠償を受けさせる必要がある」という言い方をします。)。
 そこで、改正前は、ごく単純に、「不法行為に基づく損害賠償債務」を負っている者(加害者)からは、相殺はできないとされていました(難しく言えば、「不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止」ということになります。)。
もっとも、一口に不法行為と言っても、その悪質さには程度の差がありますし、また、不法行為ではなく債務不履行による損害賠償債務ならば相殺を禁止しなくてもいいのかといった問題がありました。
そこで、被害者に現実の賠償を受けさせる必要性の度合いという観点から、相殺禁止の範囲を合理的なものとすべく、@「悪意による不法行為」に基づく損害賠償債務を負っている者(加害者)、または、A「人の生命・身体」の侵害による損害賠償債務(不法行為だけでなく、債務不履行も含む)を負っている者(加害者・債務者)からは相殺できないというルールに改正されることになりました。
 ただし、@・Aのいずれも、被害者に現実の賠償を受けさせるための相殺禁止ですので、損害を被った被害者が損害賠償債権を譲渡した場合には、加害者が、その譲受人(この人は被害者ではありません)に対して相殺することは認められます。
 なお、やや細かい点ですが、@で出てきた「悪意」は、積極的な加害の意欲(俗にいう「害意」)まで必要で、単なる「故意」では足りないとされています。
 このように、改正によって、不法行為に基づく損害賠償債務であっても、加害者側から相殺できる場合が認められることになりました。例えば、「過失」によって他人の「物」を壊してしまった場合、壊した人は、不法行為に基づく損害賠償債務を負うことになりますが、「過失」なので@の「悪意による不法行為」ではありませんし、「物」なのでAの「人の生命・身体」の侵害でもないことから、加害者側からの相殺ができることになります。


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債権の消滅・相殺・表2.PNG

2020年06月06日

《宅建試験対策15》第三者による弁済(債権の消滅)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)債権は、通常、債務者によって弁済がされますが、債務者以外の「第三者による弁済」であっても、それで債権を満足させられるのであれば認めてもかまわないわけです。そのため、第三者による弁済は、原則として有効です。
 これに対して、@画家が絵を描く債務のように、債務の性質上、第三者が行うのが許されないような場合や、A当事者が、第三者による弁済を「認めない旨の特約」をしているときは、例外的に第三者による弁済は認められず、無効になります。なお、このAの例外については、改正前後で条文上の文言が若干変わっていますが、実質的な変更はありません。

b)「債務者の意思」に反する第三者の弁済については、有効となる場合と無効となる場合があります。
 まず、物上保証人や抵当不動産の第三取得者など、弁済をすることについて「正当な利益」(なお、改正前は、「利害関係」という文言でしたが、実質的な変更ではありません)を有する第三者による弁済は、債務者の意思に反するものであったとしても有効となります。
 逆に言えば、正当な利益を有しない第三者が、債務者の意思に反して弁済をすれば「無効」となります。ただし、改正により、正当な利益を有しない第三者が、債務者の意思に反して弁済した場合(=本来、弁済が無効となる場合)であっても、債務者の意思に反することを「債権者が知らなかった」ときは例外的に有効になるという債権者を保護する規定が設けられました。このような保護規定がないと、債務者の意思に反することを知らずに弁済を有効として扱った債権者に迷惑がかかってしまうからです。

c)「債権者の意思」に反する第三者の弁済については、改正前はそもそも規定がありませんでしたが、改正により、債務者の意思に反する場合と同じような規定が設けられ、有効となる場合と無効となる場合で分かれます。
 まず、「正当な利益」を有する第三者による弁済は、債権者の意思に反するものであったとしても有効となります。
 他方で、正当な利益を有しない第三者が、債権者の意思に反して弁済(例えば、一方的に債権者の口座に振り込むようなケース)をすれば「無効」となりますし、債権者としては弁済の受領を拒絶できます。もっとも、この例外として、第三者が債務者の委託を受けて弁済することを債権者が知っていたときは、債務者の意思に反しないことが明らかなケースであることから、弁済は有効となり、債権者は弁済の受領を拒むことはできません。これは、第三者による履行引受があった場合の例外ということになります。


第三者弁済・表1.PNG



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