カテゴリ

2020年07月04日

《宅建試験対策18》売主の担保責任(売買契約)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)他人の物を売買契約の目的とした場合、物権的には(所有権移転という点)それだけでは効力は生じませんが、契約としては(債権的には)有効で、売主は、真の所有者から権利を取得して買主に移転しなければなりません。では、売買契約の目的物が「全部」他人の物であった場合(全部他人物売買)に、売主が真の所有者から権利を取得できずに、買主に権利を移転できないことになったらどうなるでしょうか。
 改正前は、このようなケースでは、買主は契約の解除をすることができ、善意の買主については、損害賠償請求をすることもできるという売主の担保責任の規定がありました。
 改正後は、このような全部他人物売買の特別の規定は削除され、契約全般に共通するルールである債務不履行の中の履行不能に基づく責任で処理されることになります。したがって、買主は、売主に対して、債務不履行(履行不能)に基づいて契約の解除や損害賠償請求をすることになります。

b)物の種類・品質・数量が契約の内容に適合しない場合(「物」の不適合)、目的物に地上権や抵当権などが実はついていたケース・あるはずの敷地利用権が実際にはなかったケース・「一部」他人物売買のケースのような、権利が契約の内容に適合しない場合(「権利」の不適合)、改正前は、@一部他人物の場合、A数量不足・一部滅失の場合、B地上権等がある場合、C抵当権等がある場合、D瑕疵がある場合という類型ごとに売主の責任を細かく定めていました。
 これに対して、改正後は、物や権利の不適合全般について、本来想定されていた契約の内容(あるべき契約の内容)から見て、実際に売主によってされた履行があるべき契約内容に適合していない場合の共通ルールとして売主の担保責任を定めています。責任追及の方法は4つ認められており、あるべき契約内容に適合していないことから、債務不履行に基づく@契約の解除、A損害賠償請求ができることに加えて、売買契約の特別ルールとしてB追完(ついかん)請求、C代金減額請求が認められています。
 このうち、B追完請求というのは、あるべき契約内容に適合させるように求める(100点満点にするように求める)ことで、具体的には、修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを求めることができます。具体的な追完方法の選択権は、基本的には買主にありますが、買主に不相当な方法を課すものでなければ、売主の方で、異なる方法による追完をすることもできます(例えば、買主が代替物の引渡しを求めたのに対して、売主の判断で修理対応をするような場合です。)。
 また、C代金減額請求は、適合していない部分に応じて代金を安くするように求めることです(例えば、不適合があるので70点だから、代金を3割減額するように求めることです。)。もっとも、代金減額請求は、原則として、買主が履行の追完の催告をしたにもかかわらず、追完されない場合にはじめてできることになっています。つまり、原則として、追完請求を先行しなければ代金減額請求はできません。

c)売主の担保責任が発生する場合に、買主は、いつまでに、どのよう方法で売主に責任追及しなければならないかについて、改正前の担保責任のうち、瑕疵担保責任では、@買主が瑕疵を知った時から1年以内に権利行使(除斥期間)をし、かつ、A一般的な消滅時効の期間内(つまり、引き渡しから10年以内)に権利行使をしなければならないとされていました。
 これに対して、改正後は、「品質・種類」に関する不適合については、@売主が不適合について悪意や重過失の場合を除き、買主が不適合を知った時から1年以内に「通知」(不適合の種類や範囲を伝えればそれで足り、権利行使までの必要はありません。)し、かつ、A一般的な消滅時効の期間内(知った時から5年以内、引き渡しから10年以内)に権利行使をしなければなりません。他方で、「数量・権利」の不適合については、「通知」の必要はなく、単に、一般的な消滅時効の期間内(知った時から5年以内、引き渡しから10年以内)に権利行使をすればよいこととされています。


売主の担保責任・表1.PNG


売主の担保責任・表2.PNG

2020年06月20日

《宅建試験対策17》解除・危険負担(契約総則)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)債務不履行があった場合に、債権者が取ることができる手段として、契約関係を消滅させて自分自身の債務をなくす「契約の解除」と、債務不履行による損害を相手方に支払わせる「損害賠償請求」の2つがあります。
 この2つのうち、契約を解除するための要件として、改正前は、損害賠償請求と同様に「債務者の帰責事由」が必要とされていました。
 しかし、改正後は、契約の解除に「債務者の帰責事由」は不要(=債務者に落ち度がなくても、債権者は、契約を解除できる)とされました。もっとも、「債権者」の帰責事由による債務不履行の場合まで、債権者による解除はできません。なお、損害賠償請求については、債務者の帰責事由が必要なことは改正前後で変わりません。
 また、改正前から、判例によって、債務不履行の部分がわずかの場合や、付随的義務の不履行については契約の解除が認められていませんでした。そこで、改正により、この判例の考え方を前提に、債務不履行が「軽微」なときは解除ができないことが明文化されました(したがって、この点は、実質的な変更ではありません)。

b)双務契約(契約当事者双方が債務を負う契約)において、一方の債務が当事者双方の帰責事由によらずに履行不能となった場合に、履行不能になっていない方の債務(反対債務)をどのように扱うかというのが「危険負担」の問題です。
 この点、改正前は、原則として、反対債務も「消滅」するとしつつ、特定物の売買契約などの場合には、例外的に反対債務は消滅しない(反対債務を履行しなければならない)とされていました。
 ところが、aで述べたとおり、解除の要件に関して、債務不履行で契約を解除するために、債務者の帰責事由はいらないという改正がなされました。そうであれば、危険負担のケースにおいても、債権者は契約を解除して、契約関係を消滅させることができることになります。つまり、改正「前」の危険負担の効果(原則として、反対債務が消滅する)と改正「後」の解除の効果(解除により反対債務を消滅させる)は、ダブってしまうわけです。
 そこで、改正後は、反対債務を消滅させる役割は「解除」に任せ、「危険負担」は、反対債務の「履行を拒絶」できるという効果に変わりました。
 また、改正前の危険負担の例外ルール(特定物の契約などの場合)によると、例えば、中古住宅(=特定物)の売買契約をして、まだ引き渡しを受ける前の段階で、天災により住宅が滅失したような場合に、買主は売買代金を支払わないといけない(反対債務を履行しなければならない)という結論になりますが、このような結論が妥当ではないという意見が強くありました。そこで、改正により、この特定物の契約に関する例外ルールも削除されることになりました。
 結局、双務契約において、一方の債務が当事者双方の帰責事由によらずに履行不能になった場合、債権者は「解除」により契約関係を消滅させることができますが、解除する前であっても、危険負担の規定によって、自らが負っている反対債務の履行を拒むことができることになったわけです。



解除・危険負担・表.PNG

2020年06月14日

《宅建試験対策16》相殺(債権の消滅)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)互いに債務を負っている当事者間において、相殺を行わない旨の特約(相殺禁止特約)がある場合、この当事者は、いずれも相殺をすることができません。
 もっとも、相殺するつもりで債権を譲り受けた者や債務を引き受けた者が、実は相殺禁止特約がついていたことを知らなかったというケースもあり得ます。
 そこで、改正前は、相殺禁止特約について「善意」の第三者には対抗できない、つまり特約を知らずに債権を譲り受けた者や債務を引き受けた者は相殺できるとされていました。これに対して、改正後は、特約について「善意かつ無重過失」の第三者には対抗できないとなりましたので、単に知らないだけでは第三者は保護されず、特約の存在について重過失がない場合にはじめて相殺できることになります。

b)不法行為や債務不履行によって損害が発生した場合、加害者(債務者)は、被害者(債権者)に対して損害賠償債務を負っていることになります。では、このようなケースにおいて、逆に、被害者(債権者)も、加害者(債務者)に対して、何らかの債務を負担している(例えば、加害者からお金を借りていたなど)場合、加害者(債務者)と被害者(債権者)の双方が互いに債務を負担していることになりますので、当然、相殺ができるようにも思われます。
 しかし、相殺は、互いの債務を計算上帳消しにすることですので、実際にはお金を支払わないという特徴があります。となると、損害賠償債務を負っている加害者(債務者)からの相殺を常に認めてしまうと、被害者(債権者)の懐には実際にお金は入ってこないことになり、被害者(債権者)が気の毒なわけです(このような価値判断のことを、「被害者に現実の賠償を受けさせる必要がある」という言い方をします。)。
 そこで、改正前は、ごく単純に、「不法行為に基づく損害賠償債務」を負っている者(加害者)からは、相殺はできないとされていました(難しく言えば、「不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止」ということになります。)。
もっとも、一口に不法行為と言っても、その悪質さには程度の差がありますし、また、不法行為ではなく債務不履行による損害賠償債務ならば相殺を禁止しなくてもいいのかといった問題がありました。
そこで、被害者に現実の賠償を受けさせる必要性の度合いという観点から、相殺禁止の範囲を合理的なものとすべく、@「悪意による不法行為」に基づく損害賠償債務を負っている者(加害者)、または、A「人の生命・身体」の侵害による損害賠償債務(不法行為だけでなく、債務不履行も含む)を負っている者(加害者・債務者)からは相殺できないというルールに改正されることになりました。
 ただし、@・Aのいずれも、被害者に現実の賠償を受けさせるための相殺禁止ですので、損害を被った被害者が損害賠償債権を譲渡した場合には、加害者が、その譲受人(この人は被害者ではありません)に対して相殺することは認められます。
 なお、やや細かい点ですが、@で出てきた「悪意」は、積極的な加害の意欲(俗にいう「害意」)まで必要で、単なる「故意」では足りないとされています。
 このように、改正によって、不法行為に基づく損害賠償債務であっても、加害者側から相殺できる場合が認められることになりました。例えば、「過失」によって他人の「物」を壊してしまった場合、壊した人は、不法行為に基づく損害賠償債務を負うことになりますが、「過失」なので@の「悪意による不法行為」ではありませんし、「物」なのでAの「人の生命・身体」の侵害でもないことから、加害者側からの相殺ができることになります。


債権の消滅・相殺・表1.PNG



債権の消滅・相殺・表2.PNG

2020年06月06日

《宅建試験対策15》第三者による弁済(債権の消滅)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)債権は、通常、債務者によって弁済がされますが、債務者以外の「第三者による弁済」であっても、それで債権を満足させられるのであれば認めてもかまわないわけです。そのため、第三者による弁済は、原則として有効です。
 これに対して、@画家が絵を描く債務のように、債務の性質上、第三者が行うのが許されないような場合や、A当事者が、第三者による弁済を「認めない旨の特約」をしているときは、例外的に第三者による弁済は認められず、無効になります。なお、このAの例外については、改正前後で条文上の文言が若干変わっていますが、実質的な変更はありません。

b)「債務者の意思」に反する第三者の弁済については、有効となる場合と無効となる場合があります。
 まず、物上保証人や抵当不動産の第三取得者など、弁済をすることについて「正当な利益」(なお、改正前は、「利害関係」という文言でしたが、実質的な変更ではありません)を有する第三者による弁済は、債務者の意思に反するものであったとしても有効となります。
 逆に言えば、正当な利益を有しない第三者が、債務者の意思に反して弁済をすれば「無効」となります。ただし、改正により、正当な利益を有しない第三者が、債務者の意思に反して弁済した場合(=本来、弁済が無効となる場合)であっても、債務者の意思に反することを「債権者が知らなかった」ときは例外的に有効になるという債権者を保護する規定が設けられました。このような保護規定がないと、債務者の意思に反することを知らずに弁済を有効として扱った債権者に迷惑がかかってしまうからです。

c)「債権者の意思」に反する第三者の弁済については、改正前はそもそも規定がありませんでしたが、改正により、債務者の意思に反する場合と同じような規定が設けられ、有効となる場合と無効となる場合で分かれます。
 まず、「正当な利益」を有する第三者による弁済は、債権者の意思に反するものであったとしても有効となります。
 他方で、正当な利益を有しない第三者が、債権者の意思に反して弁済(例えば、一方的に債権者の口座に振り込むようなケース)をすれば「無効」となりますし、債権者としては弁済の受領を拒絶できます。もっとも、この例外として、第三者が債務者の委託を受けて弁済することを債権者が知っていたときは、債務者の意思に反しないことが明らかなケースであることから、弁済は有効となり、債権者は弁済の受領を拒むことはできません。これは、第三者による履行引受があった場合の例外ということになります。


第三者弁済・表1.PNG



第三者弁済・表2.PNG

2020年05月30日

《宅建試験対策14》債務者の抗弁(債権譲渡)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)債権譲渡があった場合、債務者は、譲渡に直接関わっていないわけですから、債権譲渡の対抗要件が備わるまで(通知や承諾まで)に譲渡人に対して主張できた内容(抗弁)を、譲受人に対しても同じように主張できて当然のはずです。
 ところが、改正前は、この例外として、債権譲渡について、債務者が「異議なき承諾」をした場合、債務者は譲受人に対して抗弁を主張できないというルールがありました。
 しかしながら、単に債務者が何も言わずに承諾した(異議なき承諾)というだけで、抗弁を主張できなくなるのは、債務者がかわいそうということで、この「異議なき承諾」の例外ルールは廃止されました。その結果、債務者は、譲渡通知の場合でも承諾の場合でも、対抗要件が備わるまでに生じた抗弁を譲受人に主張できることになりました。

b)債権譲渡があった場合、債務者が譲渡人に対して有している反対債権を使って、譲受人に相殺の主張ができるかどうかについて、改正前は、民法に明確な規定がありませんでした。もっとも、最高裁は、譲渡通知を受ける前から譲渡人に対して反対債権を有していれば、譲受人に対して相殺を主張できるという判断をしていました。
 改正後は、まず、この判例ルールを条文化し、対抗要件が備わる「前」に譲渡人に対して取得した反対債権により、譲受人に対して相殺を主張できるという改正がされました。つまり、この点については、条文化されただけで、実質は変わらないということです。
 他方、改正により、対抗要件が備わった「後」に譲渡人に対して「取得」した債権であっても、対抗要件が備わる「前の原因」に基づいて生じた債権などについては、「他人の債権」を取得した場合を除いて、相殺を主張できるとされました。したがって、この点については、改正前よりも相殺できる範囲が広がったと言えます。


債務者の抗弁・表1.PNG



債務者の抗弁・表2.PNG

2020年05月23日

《宅建試験対策13》譲渡制限特約(債権譲渡)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)改正前の民法では、債権者と債務者との間で、債権譲渡を禁止するなどの譲渡を制限する特約をしていた場合、原則として債権譲渡は「無効」(譲渡自体の効力を認めない)であり、例外として、譲受人が、譲渡制限特約について「善意かつ無重過失」であれば、債権譲渡は「有効」になるとされていました。
 しかしながら、改正により、譲渡制限特約があった場合でも、譲受人の認識(善意・悪意・過失の有無)と関係なく、債権譲渡は「有効」となります。
 ただし、せっかく譲渡制限特約を定めた債務者の保護のために、譲受人が特約について「悪意または重過失」である場合は、債務者は譲受人に対して履行(支払いなど)を拒否できることになりました。債権譲渡自体が「無効」になるのではなく、譲渡は「有効」で、債務者が譲受人に「履行拒否」できるという仕組みに変わったところがポイントです。
 ただ、こうなると、債務者が、新しい債権者(譲受人)にも元の債権者(譲渡人)のどちらにも履行をしないという事態(いわばデッドロック状態)が生じます。そこで、このような事態にならないように、譲受人が、債務者に対して、元の債権者(譲渡人)に履行するよう催告し、それでも債務者が履行しなければ、債務者は新しい債権者(譲受人)からの履行を拒めなくなるという規定も設けられました。
 なお、譲渡制限特約に反した債権譲渡も「有効」になるという改正ルールの例外として、「預貯金債権」については、譲受人が特約について「悪意または重過失」であれば(実際上は、預貯金債権なので、少なくとも重過失は認められると思われます。)、債権譲渡自体が「無効」となることも知っておきましょう。

b)譲渡制限特約のついた債権が強制執行により差し押さえられた場合、改正前の条文には何も規定がありませんでしたが、最高裁により、債務者は、差押債権者に対して譲渡制限特約を対抗できない、つまり、強制執行を「拒めない」とされていました。
 改正後は、この判例ルールが条文で規定されることになりました。判例ルールと同じ内容にするという改正ですので、実質的な変更はありませんが、知識として押さえておきましょう。


譲渡制限特約・表1.PNG



譲渡制限特約・表2.PNG

2020年05月16日

《宅建試験対策12》保証契約後の保証人保護(多数当事者の債権・債務)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)保証契約をした後の保証人保護ルールの1つ目として、主債務者から委託を受けて保証人となった者(個人・法人いずれでもOK)から請求があった場合、債権者は、その保証人に対して、主債務の履行状況に関する情報(不履行の有無、残額、期限到来している額)を提供しなければならないという規定が、改正により新設されました。
 これは、主債務者の支払いが遅れている場合に、保証人としてできるだけ早く代わりに支払って、遅延金などが膨らむのを防ぐためです。
 もっとも、この債権者に課せられた情報提供義務に債権者が違反した場合の効果は、民法上特に明記されていません。したがって、債権者の情報提供義務違反があった場合、保証人は、債務不履行一般の規定に基づいて損害賠償請求などができるということになります。

b)保証契約をした後の保証人保護ルールの2つ目として、主債務者が、支払いができなくなって期限の利益を喪失した場合、債権者は、期限の利益の喪失を知ったときから2ヶ月以内に、保証人(委託の有無を問いませんが、個人に限ります)にその旨を通知しなければならないという規定が、改正により新設されました。
 この規定も、個人保証人ができるだけ早く代わりに支払って、遅延金などが膨らむのを防ぐためです。
 そして、仮に、債権者がこの情報提供(通知)義務に違反して通知を怠った場合、債権者は、保証人に、期限の利益喪失から通知までの遅延損害金を請求できないという効果が規定されています。


保証契約後の保証人保護・表1.PNG



保証契約後の保証人保護・表2.PNG



保証契約後の保証人保護・表3.PNG

2020年05月09日

《宅建試験対策11》保証契約の効力と保証人保護(多数当事者の債権・債務)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)主債務者が、誰かに保証人になってくれるようにお願いする際に、主債務者の財産状況、主債務以外の他の債務の有無・額・履行状況などの情報について、保証人に知らせなければならないという情報提供義務の規定が改正によって新設されました。
 もっとも、情報提供義務が課せられるのは、保証のうち、@事業のために負担する債務(貸金に限らず、賃料債務や買掛債務も含みます)の保証(もしくは事業のために負担する債務を含む根保証)であること、A保証人が個人であること(つまり、法人が保証人となる場合は対象外)という要件を満たしたものだけです。
 そして、この情報提供義務に主債務者が違反した場合(つまり、情報を提供しなかったり、虚偽の情報を提供したりした場合)は、債権者が、情報提供義務違反があったことについて、悪意(知っていた)又は有過失(知らなかったが気づけた)であれば、個人保証人は保証契約を「取り消せる」ことになりました。個人保証人からすれば、主債務者の財産状況などを正確に把握していれば保証などしなかったと言えますし、債権者の方もそのことに気づけたという落ち度があるからです。

b)事業のために負担した「貸金等債務」(貸金債務や手形割引)が主債務で、(根)保証人が個人の場合、保証人が公正証書により保証する意思を表明していなければ、保証契約は原則として「無効」となります。
 これまで、事業のための借り入れに際し、金融機関などが、事業とほとんど関係のない債務者の身内を保証人とすることが当たり前のように行われていましたが、そのような安易な保証を防ぐための新しい規定です。
 具体的には、保証契約を有効なものとするためには、(根)保証契約の締結前1ヶ月以内に作成された公正証書で、保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していることが必要になります。
 もっとも、この公正証書によらない事業のための借り入れの保証契約を無効にするというルールには、「経営者保証」の例外と言われるものがあります。これは、主債務者が「法人」の場合は、法人の理事・取締役や過半数株主など、主債務者が「個人事業者」の場合は、共同事業者、事業に現に従事している配偶者などについては、例外的に公正証書がなくても保証契約が有効となるというものです。実質的に主債務者の事業の経営に関わっていると評価できる者については、公正証書によらない保証契約を認めても問題ないという考え方によるものです。ちなみに、この例外にあたる場合、「公正証書が不要」になるだけですので、経営者保証であっても、保証契約である以上、口頭での契約は当然効力をもちません。

c)保証の中には、「根保証契約」と呼ばれる「一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約」があり、例えば、信用保証、賃貸借契約の保証人、入院保証、雇用契約の身元保証などのことをいいます。
 改正前の民法では、主債務の範囲に「貸金等債務」(貸金債務や手形割引)が含まれる個人による根保証契約については、「極度額」(保証する限度額)を定めない場合、契約は無効になるという規定がありました。
 しかしながら、この規定は、あくまでも、「貸金等債務」だけを対象としていますので、そうではない債務(例えば、売買代金債務や不動産賃借債務など)の根保証契約については、極度額を定めなくても有効とされていました。
 そこで、改正法では、「貸金等債務」以外にもこのルールを広げ、「個人の根保証契約全般」に極度額ルールが適用されることになりましたので、極度額の定めがない「個人根保証契約」は広く無効とされます。
 そのため、例えば、賃貸住宅における賃借人の連帯保証についても極度額ルールが適用されることになり、保証人が責任を負う極度額を定めなければならないことになりましたので、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書」もそれに合わせて改定されました。


保証契約の効力・表1.PNG


保証契約の効力・表2.PNG

2020年05月02日

《宅建試験対策10》保証債務の性質(多数当事者の債権・債務)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)保証債務には付従性がありますので、改正前から、保証人は、主債務者が有する抗弁権を援用できる(例えば、主債務者が同時履行の抗弁権を有している場合、保証人も支払を拒絶できる)と解釈されており、このような趣旨から、条文上も、「相殺」についての規定がありました。
 改正後は、条文上も「相殺」に限定せず、保証人は、主債務者が主張できる「抗弁全般」を債権者に対抗できるという規定になりましたので、実質的な変更ではありませんが、従来の解釈を明文化したものと言えます。
 もっとも、主債務者が、その意思表示をすることによって債務を免れることになる「相殺権、取消権、解除権」という権利を有している場合、それらの権利を有していない保証人が、自ら権利を行使することまで認めるのは行き過ぎであると従来から考えられていました。
 そこで、改正民法は、このような考え方を前提に、主債務者が「相殺権、取消権、解除権」を有する場合には、これらの権利を行使することによって主債務者が債務を免れる限度で、保証人が債権者に「履行を拒める」という規定を新たに設けました。

b)保証には、普通保証(単なる保証)と連帯保証(主たる債務者と連帯して債務を負担する保証人)とがあります。
そして、主債務者に生じた事由は、原則として保証人(連帯保証人を含む)に影響を及ぼすのに対して、保証人(連帯保証人を含む)に生じた事由は、原則として、主債務者には影響を与えません。
 もっとも、保証人(連帯保証人を含む)に生じた事由のうち、債権者を満足させる事由(弁済、相殺、更改の3つ)については、例外的に主債務者に影響を及ぼし、主たる債務も消滅することになります。
 さらに、改正民法では、保証のうち、「連帯保証」については、この3つに加えて、「混同」も主債務者に影響を及ぼすとなっていますので、全部で4つの例外があることになります。
 なお、改正前は、連帯保証については、これらの4つ以外に「請求」も主債務者に影響を及ぼす(全部で5つの例外あり)とされていましたが、改正により「請求」は相対効に変わりました。したがって、「連帯保証」と「連帯債務」は、いずれも、@弁済、A相殺、B更改、C混同の4つだけが絶対効になりましたので、改正前と比べると覚えやすくなっています。


保証債務の性質・表1.PNG



保証債務の性質・表2.PNG


保証債務の性質・表3.PNG

2020年04月25日

《宅建試験対策9》連帯債務(多数当事者の債権・債務)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫

a)連帯債務者の1人に対して、履行の請求をすると、請求を受けた連帯債務者の時効の完成猶予や、履行遅滞につながることになります。
 そして、この履行の請求の効果が、請求を受けていない他の連帯債務者にどのような影響を及ぼすかについて、改正前は、連帯債務者のうちの1人に請求することで、他の連帯債務者に対しても請求したのと同じ扱い(いわゆる絶対効)になるとされていました。
 しかし、改正により、請求の効果は、実際に請求を受けた連帯債務者にしか及ばず、他の連帯債務者には請求の効果は生じない(いわゆる相対効)ことに変わりました。

b)連帯債務者の1人に対する債務の免除があった場合、その連帯債務者には、免除の効果が当然及びますので、例えば、全額免除を受ければ、債権者に対して支払う義務はなくなります。
 そして、この免除の効果について、改正前は、免除を受けた連帯債務者の負担部分の限度で、他の連帯債務者の債務も消滅する(つまり、負担部分のみ絶対効)となっていました。
 しかし、改正により、債務の免除は相対効となりましたので、免除の効果は他の連帯債務者には及ばないことになりました。したがって、他の連帯債務者の債務は消滅しません。なお、この場合に、他の連帯債務者が債権者に対して連帯債務を支払えば、免除を受けた連帯債務者に対する求償をすることは可能です。

c)連帯債務者の1人について消滅時効の完成があった場合、その連帯債務者の債務は消滅し、債権者に対して支払う義務はなくなります。
 そして、この時効の効果が他の連帯債務者に対してどのような影響を及ぼすかについて、改正前は、時効完成があった連帯債務者の負担部分の限度で、他の連帯債務者の債務も消滅する(つまり、負担部分のみ絶対効)となっていました。
 しかし、改正により、時効の完成は相対効となりましたので、時効完成の効果は他の連帯債務者には及ばないことになりました。なお、この場合に、他の連帯債務者が債権者に対して連帯債務を支払えば、時効により債務が消滅した連帯債務者に対して求償できることは免除と同じです。
 結局、消滅時効の完成については、改正前後を通じて、免除の場合と全く同じ扱いをすることになります。

d)連帯債務者の1人が、債権者に対して債権(反対債権)を有している場合、改正前は、その連帯債務者の負担部分の範囲で、他の連帯債務者は、その反対債権を使って「相殺できる」とされていました。
 しかし、他人の債権を使って相殺までできるのは行き過ぎではないかということで、改正後は、他の連帯債務者が相殺することはできなくなりました。その代わりに、反対債権を有する連帯債務者が相殺を援用するまでの間、その負担部分の限度で、他の連帯債務者は、債権者に対する「履行を拒める」ことになりました。例えば、連帯債務者2人で1000万円の連帯債務を負っている場合に、1人の連帯債務者が1000万円の反対債権を有していれば、相殺されるまでの間、もう1人の連帯債務者は、債権者から1000万円の請求があっても、500万円については支払を拒めることになります。


連帯債務・表1.PNG



連帯債務・表2.PNG