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2020年02月05日

遺言を撤回したいときにどうするか?

 遺言は、一度作ったとしても、いつでも簡単に撤回することができますが、撤回の方法としては4つ考えられます。
 1つ目は、新しく遺言を作り、その中で、前の遺言の全部または一部を撤回するという方法です。
 2つ目は、新しく遺言を作り、その中で、前の遺言を撤回するとははっきり書かずに、内容的に前の遺言と抵触(矛盾)する内容とする方法です。この場合、撤回されるのは、前の遺言の「全部」とは限らず、内容的に抵触(矛盾)する部分に限られます。
 3つ目は、遺言に書いた内容と抵触(矛盾)する行為をする方法です。例えば、遺言で「○○の不動産をAに相続させる」と書いているにもかかわらず、その不動産を生前に売却するようなケースです。
 4つ目は、遺言書を故意に破棄する方法です。
 以上のように、@遺言による撤回、A矛盾する遺言、B矛盾する行為、C遺言書の破棄の4つの方法がありますが、実際には、撤回したい遺言書をきっちりと破棄して、新しい遺言書を作成するのがいいと思います。
posted by 上田孝治 at 23:48 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム

2020年01月27日

遺産狙いの結婚を見破る(?)一つの質問

 遺産狙いで資産家の高齢者と親しくなり、あの手この手で多額の遺産を手に入れるという話は、世間一般のみならず、仕事上もときどき耳にします。
 かつて「後妻業」という形で話題にもなりましたが、こういう話において、犯罪手段によらずに、遺産を手に入れるルートとしては大きく2つあります。
 1つ目は、遺言を作成してもらうルートです。この「遺言ルート」は、結婚していなくても可能な方法ですが、何と言っても、資産家本人の意思に基づいて遺言を作成してもらわなければ始まりません。特に、高齢者が認知症などで判断能力が乏しい場合、公正証書遺言であれば、そもそも公証人から作成を断られるケースもありますし、自筆証書遺言であれば、その有効性をめぐって法定相続人である親族との争いが生じる可能性が高くなります。また、仮に有効な遺言を作成していたとしても、法定相続人から遺留分侵害額請求を受けることで、受け取れる額が減る可能性もあります。
 2つ目は、結婚をするルートです。「結婚ルート」によれば、遺言など全くなくても、配偶者として、当然に一定額を受け取れることになりますので、遺産を手に入れたい側としては確実な方法と言えます。もちろん、結婚しても、その後に離婚してしまえばこの方法も終わりですが、片方が離婚を拒否している場合、浮気や暴力などの特別の事情がない限り、なかなか離婚は認められません。また、結婚している場合、「配偶者には一円も渡さない」という遺言を作成することはできますが、その場合でも配偶者には遺留分がありますので、遺言むなしく、一定額は配偶者の手に渡ってしまうことになります。
 というわけで、資産家の高齢者が結婚してしまうと、結婚後に「実は後妻業的な話だった」と分かっても、基本的には後の祭りということになります。
 なお、遺留分については、生前に家庭裁判所で手続をして、裁判所の許可をもらって放棄することができますので、遺留分の生前放棄を条件として結婚するというやり方も考えられなくはありません。しかし、遺留分放棄の許可には、放棄の代償のようなものが必要とされますので、「結婚する」というだけでは代償とは言えず、裁判所の許可はもらえないと思います。もっとも、実際上は、結婚の話が出た際に、資産家の方から「結婚した場合、遺留分の生前放棄をお願いしたい・・・」などと言うと、後妻業的な人であれば勝手にフェードアウトするような気もしますので、このような質問をすることは、遺産狙いの結婚かどうかを見破るためのリトマス試験紙としての意味はあるかもしれません。
posted by 上田孝治 at 14:19 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム

2020年01月15日

遺言書に印鑑が押されていなかったので、勝手に印鑑を押してみたら・・・

 自筆証書遺言には、その効力が認められるための厳格な要件が定められており、その要件の一つに印鑑が押してあることがあります。ですので、押印のない自筆証書遺言は要件を欠いて無効になります。遺言が無効ということになれば、遺言に書いてある内容とは関係なく、法定相続に従った相続が行われることになります。つまり、印鑑がないだけで、遺言を作った意味はなかったとうことになるのです。
 では、遺言者が自筆証書遺言に印鑑を押さないまま亡くなった場合に、その遺言を見つけた相続人の一人が、慌てて亡くなった方の印鑑を使って遺言書に印鑑を押した場合、どういうことになるのでしょうか。
 まず、大前提として、いくら本人の印鑑であったとしても、遺言を作成した本人が押印していないわけですので、(そのような不正が発覚するかどうかはさておき)この遺言は無効です。したがって、後でいくら印鑑を押したところで、遺言に従った遺産の分配はされないことになります。
 もっとも、これだけでは終わりません。次の段階として、勝手に印鑑を押した相続人が「相続欠格者」となるのではないかという問題が出てきます。「相続欠格」というのは、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿などをしてしまった者が、相続人から外されてしまうという制度です。つまり、相続欠格者は、法定相続に従った相続もできないことになりますので、およそ何ももらえないということになってしまいます。
 この点、遺言に勝手に印鑑を押すという行為は、確かに遺言書の偽造や変造にあたり、「相続欠格」となってしまいそうな気がしますが、最高裁昭和56年4月3日判決で、遺言の方式を整えて遺言者の意思を実現させるための行為であり、遺言に対する不当な干渉とは言えないなどとして、勝手に印鑑を押しても相続欠格者にはあたらないと判断されたケースがあります(なお、しつこいようですが、相続欠格にはあたらなくても、遺言としては無効です。)。
 とはいえ、ケースバイケースの判断となりますので、遺言書に勝手に印鑑を押すことが絶対に相続欠格にならない、とまでは言い切れませんので、相続欠格になって何も相続できないという悲惨な結果にならないためにも、勝手に印鑑を押すような行為は避けるのが賢明です。
posted by 上田孝治 at 11:40 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム

2020年01月07日

親子の縁を切ることはできるのか

 市役所などの市民法律相談において、「子どもがどうしようもないので、親子の縁を切りたい」という親側からの相談がときどきあります。
 親が子どもと「縁を切る」ということの具体的な意味として、@法律上の親子関係を解消したい、A子どもに相続させたくない、の2つに分けて考えてみます。
 まず、@の法律上の親子関係の解消については(特別養子縁組をする場合を除いて)できません。実の親子にあっては、夫婦の場合の離婚や、養親子関係における離縁のような制度がないからです。
 もっとも、成人した子どもが何か不祥事をした場合に、親が、親であるという理由だけで連帯して法的な責任を負う制度はありません。結局、子どもが成人していれば、法律上の親子関係があったとしても、第三者との関係では親の責任の有無に影響はありません。ただし、法律上の親子間には扶養義務がありますので、具体的な扶養の程度や内容はケースバイケースとはいえ、親族内部においては親であることにより一定の義務が発生することがあります。
 次に、A子どもに相続させないことは法律上可能です。具体的には、法定相続人になる予定の人(いわゆる推定相続人)に、虐待や侮辱などの著しい非行があった場合に、家庭裁判所に請求して相続人としての資格を剥奪する「廃除」という制度があります。ですので、親が子どもを所定の手続によって「廃除」できれば、子どもに相続させないことができますが、子どもに子ども(つまり孫)がいる場合は、孫が子どもの代わりに相続してしまうことになります(これを代襲相続と言います)ので注意しましょう。
 なお、「廃除」の手続をしなくても、遺言の中で「何も相続させない」と書くことはできますが、それだけだと子どもに遺留分がありますので、遺言では完全に相続させない方法としては不十分です。
 ということで、実の親子である以上は、法律上、完全に縁を切ることはできません。もちろん、事実上、子どもと連絡をとらないことで俗にいう絶縁をすることはできますが、そうしていても、法律上は死ぬまで親子関係が続くことになります。
posted by 上田孝治 at 22:11 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム