カテゴリ

2020年06月12日

アンジャ渡部“トイレ不倫”…ヒルズ側が被害届出せば「建造物侵入罪」の可能性も(2020年6月12日のニュース)

 Yahoo!ニュースによれば、お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建が六本木ヒルズの地下駐車場にある多目的トイレで性行為に及んでいたと週刊文春に報じられたことを受け、若狭勝弁護士は、六本木ヒルズ側が被害届などを出した場合に「建造物侵入罪にあたる可能性がある」と指摘した、とのことです。

 まず、建造物侵入罪は刑法130条前段に規定されている犯罪で、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入」した場合に、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金になるとされています。
 そして、渡部さんの件に関係する建造物侵入罪の要件としては、@「建造物」、A「侵入」の2点があります。
 まず、「建造物」とは、屋根があり、柱などで支えられ、土地にくっついていて、人が出入りできる構造をもつもののうち住宅や邸宅以外を指し、建造物の一部(会議室、トイレなど)であっても「建造物」と言えます。
 次に、「侵入」とは、諸説ありますが、一般的には、居住者や管理者などの管理権者の意思ないし推定的意思に反する立ち入りのことを言うとされています。今回のケースのように、一般客が集まることが予定されている場所への侵入については、社会通念上一般に許される範囲の立ち入りであれば、管理権者の包括的な同意があったと言え、侵入にはあたらないことになります。具体的には、最高裁昭和58年4月8日判決において、管理権者があらかじめ立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、「建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるとき」は、建造物侵入罪が成立するとされています。
 これを多目的トイレにあてはめてみると、多目的トイレは、特に、身体障害者の方や小さいお子さんのいる方のためのトイレやおむつ替えなどのための施設であり、管理権者がそこでの性行為を容認しているとは到底考えられません。したがって、性行為目的で多目的トイレに入ることは、意思に反する立ち入りとなり、「侵入」にあたると言えます。似たような話として、盗撮目的で商業施設のトイレに入った場合も、やはり「侵入」となります。というわけで、渡部さん(その相手も)には、建造物侵入罪が成立するということになります。
 蛇足ですが、どうしてもトイレで性行為をしたければ、管理権者の意思に反しないことに留意しないといけませんので、「一人暮らしの自宅トイレでどうぞ」ということになります(それだと意味がないのかもしれませんが・・・。)。
 さらに蛇足として、夫(あるいは妻)が、妻(あるいは夫)のいない間に自宅に不倫相手を連れ込んで・・・という場合が住居侵入罪にあたるかは争いがありますが、「現実に在宅」する者の意思を基準とすれば、住居侵入罪は不成立になります。また、一口に「住居」と言っても、「○○の部屋」という領域ごとに分けて考えることもできますので、他の部屋に立ち入らなければ住居侵入罪は不成立という考え方もあります(娘が親の反対を押し切って彼氏を自分の部屋に入れるようなケースです。)。
なお、住居の管理権者とは誰かという点について、住居の登記上の名義はさほど重要ではありません。例えば、東京高裁昭和58年1月20日判決は、妻と長らく別居していた夫が、妻の住む自己所有の家屋へ、妻の不貞行為を現認する目的で、その意思に反して、前から所持していた合鍵を使って玄関から立ち入ったケースにおいて、住居侵入罪の成立を認めています。


posted by 上田孝治 at 14:51 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年05月28日

紀州のドンフアン親族4人 財産寄付の遺言は無効と提訴(2020年5月27日のニュース)

 毎日新聞によれば、「紀州のドンフアン」と呼ばれた資産家で、2018年5月に急性覚醒剤中毒で死亡した和歌山県田辺市の会社社長の兄ら親族4人が、「全ての遺産を市に寄付する」とした遺言書は無効として、和歌山地裁に提訴した、とのことです。

 この件については、亡くなった会社社長に子どもや両親はいなかったようなので、利害関係者としては、会社社長の@配偶者(妻)、A兄弟姉妹、遺産を寄付するとされたB田辺市の三者ということになります。
 また、記事によれば、「和歌山家裁田辺支部が遺言書の要件を満たしていると判断した」とのことですが、これはおそらく、自筆証書遺言の「検認」と呼ばれる手続です。この「検認」は、遺言書の形式的な要件を裁判所が確認して、遺言書の記載内容を保存しておくだけの手続ですので、遺言書を作成したときの遺言者の判断能力がどうであったか、とか、遺言書が実は偽造されていたのではないか、などの実質的な遺言の有効・無効の判断をする手続ではありません。実際上、裁判所での「検認」の手続は、数分で終わるごく簡単なものです。
 したがって、裁判所での「検認」の手続が済んでいても、利害関係者が遺言書の無効を訴えることは何ら問題ありません。
 では、遺言が有効か無効かで、どのような結論の違いが出るのでしょうか。
 まず、遺言が有効な場合は、田辺市が全ての遺産を受け取ることができますが、妻は、(相続欠格や相続廃除になっていなければ)自分には遺留分(いりゅうぶん)があると言って、田辺市に対して、遺産の半分に相当する金銭を支払うように求めることができます。他方で、兄弟姉妹には、法律上、遺留分は認められていません(遺言が優先されるということです)ので、何ももらえないということになります。
 次に、遺言が無効な場合は、田辺市は何ももらうことはできません。無効により、遺言がないのと同じ扱いになりますので、法定相続によることになり、法定相続人(妻と兄弟姉妹)のうち、妻が4分の3、兄弟姉妹が(全体で)4分の1の相続分になります。兄ら親族が、遺言の無効を求めているのは、このためと思われます。
 ということで、田辺市からすれば遺言を有効と認めてもらいたいでしょうし、兄弟姉妹からすれば遺言を無効と認めてもらいたいということになります。なお、妻からすれば、遺言が無効である方が有利ではありますが、仮に有効であっても、遺留分侵害額請求をすれば半分はもらえるということになります。

遺言・画像.png
posted by 上田孝治 at 10:50 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年05月27日

過大還付された府民税1502万円使い切った男性…代理人弁護士「市のミス原因、返還義務ない」(2020年5月27日のニュース)

 「読売新聞オンライン」によれば、大阪府摂津市が、60歳代の男性に2018年度の府民税1502万円を過大に還付していたことから、市が返還を求めたものの、男性の代理人弁護士は「市のミスが原因。請求された時点で使い切っており、法律上、返還義務はない」と主張している、とのことです。

 まず、このような過大な還付が銀行振込で行われた場合の、振り込まれた方(口座名義人)と銀行との関係ですが、振込依頼人(本件で言えば摂津市)と口座名義人との間に振込の原因となる法律関係があるかどうかにかかわらず、口座名義人は、銀行に対して、振込金額相当の普通預金債権を取得します。したがって、預金の引き出しは、銀行との関係では問題ありません。
 次に、過大な還付金を受け取った方と摂津市との関係ですが、これは、過大な金額である以上、受け取った方がこのお金を持っておく法律上の理由がありませんので、受け取った方は、「不当利得」として、摂津市に受け取ったお金を返還する必要があります。
 もっとも、不当利得による返還については、法律上の理由がない「利得」であることを知らなかった場合には、現在、利益が残っている限度(これを「現存利益」と言います。)で返還すればよい(=現存利益がなければ返還しなくてよい)というルールがあります。例えば、レストランで「普通盛り」の食事を注文したところ、お店が間違って「大盛り」で提供してきて、それに気づかず全部食べてしまったような場合、大盛り分を食べたことは、法律上の理由がない「利得」にはなりますが、知らずに食べきって現存利益が残っていない以上、何も返還(お金による清算も含む)しなくてよいという結論になります。
 今回の件でも、男性の代理人弁護士が「請求された時点で使い切っており、法律上、返還義務はない」と主張しているのは、要するに、不当利得だと知らずにすべてお金を使い切って現存利益がないので、返還する必要はないという主張かと思われます。
 では、この主張が通るかどうかですが、2つクリアしなければならない問題があります。
 1つ目は、そもそも、本当に不当利得だと知らなかったのか、という問題です。過大であった額が少額であれば、確かに「過大とは知らなかった」ということもあるでしょうが、1502万円というのは、「知らなかった」で通すには金額が大きすぎるように思います。したがって、実際は、過大であると知っていたということになれば、当然、過大な還付分全額(および利息)を摂津市に返還する必要があります。
 2つ目は、仮に、本当に不当利得だと知らなかったとして、現存利益はないのか、という問題です。食べ物であれば、食べきってしまえば現存利益はないということになりますが、お金に関しては、お札そのものに意味があるのではなく、「〇〇円という価値」に意味があります(例えば、お金を両替しても現存利益は当然残っています)。そして、口座に誤って振り込まれた1502万円を引き出して実際に何かに使っていたとしても、そのおかげで、自分が元々有していた他の預貯金や資産などが減らないままキープできたとなるのが通常ですので、「価値としてのお金」は基本的には現存していることになります。したがって、仮に不当利得だと知らなかったとしても、やはり、現存利益としての金銭を返還すべきということになります。

住民税・画像.png

posted by 上田孝治 at 11:17 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年05月21日

販売預託商法、原則禁止へ 消費者庁、検討会で合意(2020年5月20日のニュース)

 「YAHOO! ニュース」(共同通信)によれば、消費者庁の有識者委員会が、いわゆる預託商法について、原則禁止の方向で制度を見直すことで合意し、新しい規制の枠組みを消費者庁が今後詰め、2021年の通常国会での預託法などの改正を目指す、とのことです。 

 いわゆる「預託商法」としては、かつては、豊田商事事件があり、その後、八葉物流事件、近未来通信事件、ふるさと牧場事件、安愚楽牧場事件、ジャパンライフ事件、ケフィア事業振興会事件など、実に多くの消費者被害を生じさせてきました。私自身も、これらの事件に代理人として関わったこともありますし、これら以外の預託商法事件にもいくつも関わってきました。
 元々、預託商法に関しては、「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」(預託法)という「スーパーざる法」がありました。具体的には、規制対象が政令で指定された「特定商品」(宝石類、自動販売機などの9種類のみ)に限られ、規制内容としても、@概要書面および契約書面の交付、A重要な事項についての不実告知、故意に事実を告げない行為の禁止、B威迫する言動を交えた勧誘や、契約解除の妨害行為の禁止、C預かった商品や利益の支払い拒否や、不当に遅延させる行為の禁止、D財務関係書類の閲覧請求権などに限られ、参入規制(登録制など)が全くないという「ざる」っぷりでした(そりゃ、預託商法被害も多発するでしょうよ・・・)。
 預託商法による消費者被害は、だいたいパターンが決まっていて、「超低金利でお困りでしょう。高配当のいい話がありますよ」と消費者(特に、預金の高利子時代を体感してきた高齢者)を勧誘し、出資名目でお金を出させ、しばらくの間は、当初約束していたとおりに配当的なものを支払いますので、消費者は、その期間で「まともな商法」だと信じ込まされるわけです。こうして信じ込まされたあたりのタイミングで、「もう少し追加してはどうですか?」と、消費者に資金を追加させますが、しばらく経ったころに、配当的なものの支払いが徐々に減額あるいは滞りはじめます。消費者から、「どうなっているのか」と問い合わせがあれば、もっともらしい理由をつけて、「〇月まで待ってください」などと言って時間を引き延ばし、信じ込まされている健気な消費者が言われたとおりに待っていると、今度は連絡すらつかなくなり、多額の被害が確定するというパターンです。
 ということで、預託商法を規制すべく、消費者庁が、2020年2月から「特定商取引法及び預託法の制度の在り方に関する検討委員会」を開催し、今般、原則禁止の方向で制度を見直すことで合意したという流れです。当初、消費者庁自身はあまり規制に乗り気ではなかったようなので、このような検討委員会の方向性自体はたいへんよかったと思いますが、今後の具体的な制度設計の場面で、実質的に骨抜きということにならないように、法制化の際には厳しく目を光らせなければなりません。



投資詐欺・画像.png
posted by 上田孝治 at 15:45 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年02月06日

高校生が自転車で死亡事故を起こし、約9000万円の賠償命令(2020年2月6日のニュース)

 ライブドアニュース(共同通信)によれば、高知市で2015年、当時高校生の男性が自転車で警察官に衝突し死亡させた事故を巡り、遺族が男性に損害賠償を求めた訴訟の判決で高知地裁が約9400万円の支払いを命じた、とのことです。


 高校生が、何か悪いことをやって誰かに危害を加えた場合、被害者(被害者が亡くなった場合はその遺族)は、その高校生に対して、不法行為を根拠として損害賠償請求をすることができます。もっとも、被害額がある程度大きくなる場合には、いくら高校生に損害賠償義務があると言ったところで、実際上、支払が困難ということになります(なお、加害者側が、個人賠償責任保険などの保険に加入していればそこから支払われるケースもあります。)。

 こういった場合、被害者の損害賠償請求を実のあるものにするために、比較的資力のある「高校生の親」に責任を負わせることが考えられます。

 この点、その高校生が日常的に悪いことを行っていた(いわゆる素行不良)にもかかわらず、親が漫然と放置した結果、案の定、危害が加えられたような場合は、親自身の損害賠償責任が認められる可能性があります。

 では、親が、素行不良の子どもを漫然と放置していたというような事情がない場合はどうなるかというと、民法には監督義務者の責任の規定があります。これは、未成年者が「責任能力を欠く」と評価できる場合、未成年者本人は損害賠償責任を負わない代わりに、特別の事情がない限り、監督義務者(通常は親)が肩代わり的な責任を負うというものです。そして、実務上、未成年者が責任能力を欠いているかどうかについては、おおむね12〜13歳以上であれば責任能力ありとされています。

 以上をアバウトにまとめると、小学生くらいまでの子どもが何か悪いことをすれば、子ども本人は責任を負わない代わりに、親が、原則として損害賠償責任を負うのに対して、中学生以上が何か悪いことをしても、親が漫然と放置していたような事情がない限り、親は損害賠償責任を負わないということになります。

自転車事故・画像.png
posted by 上田孝治 at 23:33 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年01月29日

遊具事故で保育所側に賠償命令(2020年1月28日のニュース)

 「NHK NEWS WEB」によれば、善通寺市の保育所で3歳の女の子が遊具の隙間に首を挟んで亡くなった事故をめぐり、両親が保育所の運営法人など相手取って損害賠償を求めていた裁判で、高松地方裁判所は、法人に3000万円余りの賠償を命じる判決を言い渡した、とのことです。


 この件に関しての具体的な情報や経緯などは全く分かりませんが、一般的に、設置してある遊具によって事故が起きた場合の損害賠償請求の根拠としては、@製造物責任の追及、A土地工作物責任の追及が考えられます。

 製造物責任の追及は、製造物責任法(PL法)に基づくもので、製造物に欠陥がある場合に、製造業者(メーカー)に損害賠償請求をする方法です。PL法にいう「製造物」は動産に限られますので、土地に設置されている遊具が不動産ではなく「製造物」にあたると言えれば、PL法に基づく責任追及が可能となります。被害者にとってのポイントは、製品に欠陥があることは証明しなければなりませんが、メーカーの落ち度を証明する必要はないという点です。なお、被害者が責任追及できるのは、製造物が市場に出てから10年間に限るという期間の限定があるのも特徴です。

 次に、土地工作物責任の追及は、民法に基づくもので、「土地の工作物」(土地にくっついて作られた設備のようなもの)の設置や保存に不完全な点がある場合に、設備の占有者や所有者に損害賠償請求できる方法です。固定式の遊具は「土地の工作物」ですので、遊具が当然に持っているべき安全性を欠いているような場合は、遊具の占有者である運営法人などが損害賠償をしなければなりません。被害者にとってのポイントは、工作物の設置や保存に不完全な点があったことは証明しなければなりませんが、占有者や所有者の落ち度を証明する必要はないという点です。

 なお、この土地工作物責任によって被害者に損害を賠償した占有者や所有者は、安全性を欠くような遊具を作成した製造業者に落ち度がある場合、被害者に賠償した分を製造業者に対して請求することができるとされています。

遊具・画像.png
posted by 上田孝治 at 12:00 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2019年11月19日

最高裁による養育費算出基準の改定により、養育費が増額か(2019年11月12日のニュース)

 「時事ドットコムニュース」によれば、裁判所で使われている養育費の算出基準について、最高裁が社会情勢の変化を反映させた改定版を策定し、12月23日に詳細を公表する、とのことです。


 現在は、離婚する前なら婚姻費用、離婚した後なら養育費の具体的な金額を算定するに際して、2003年に裁判官により公表された算出基準が裁判所でも一般的に使われており、インターネットで検索するとよく出てくる、「義務者の年収」を縦軸に、「権利者の年収」を横軸にしたグラフが有名です。細かい話をすれば、このグラフは、少し難しめの婚姻費用や養育費の算定式(数式)に基づいて作成されており、その数式に個別ケースでの収入などを当てはめていくことで細かい金額が出てくる仕組みで、これを分かりやすく分布図的にしたものがこのグラフになります。したがって、裁判所で養育費などの金額に関する争いがある場合、最終的には、細かい算定式に基づいた計算をして、裁判官が結論を出していきます。

 この算定式が、今後どのように変更されるのかは12月の詳細な公表までは分かりませんが、基本的には増額の方向だろうということで、増額の幅が大きければ、今後、養育費の増額請求を求める調停が多く起こされる可能性があります(家庭裁判所の関係者の皆様は大変だと思います。)。

 この婚姻費用や養育費に関する紛争は、お金を受け取る側(おおむね妻側)は「低すぎる」と言い、逆に支払う側(おおむね夫側)は「高すぎる」と言って、立場による感じ方の違いが鮮明にあらわれる紛争です。子育てに一定のお金がかかるのは当然ですので、実際に子どもの面倒を見ている側からすると高い金額に超したことはないわけですが、支払う側からすると、自分の手元に子どもがおらず、面会交流も満足にされないことが多く、親としての実感を持ちにくい中で、別れた妻(あるいは夫)に対してただお金を送金することの虚しさが「高すぎる」感覚を生む一つの要因ですし、最終的には養育費の不払い問題にまでつながるわけです。

 思えば、平成の前半ころまでは、離婚した場合、子どもは妻が引き取るのが夫婦共に当然で、多くの夫もそれを望み、離婚後は子どもとあまり関わらないという夫が多かったように思いますが、平成の後半ころから、離婚に際して、夫側が親権や監護権を求めるケースが非常に増えてきている印象です。ところが、結局のところ、(いいか悪いかは別として)妻側に親権や監護権がわたることが現在でも多く、夫側からすると、無念にも子どもと離れてしまうことになったにも関わらず、養育費だけ支払えというのはより一層納得がいかないということになっているのが最近の傾向です。  

 私の個人的な見解としては、別居あるいは離婚により夫婦という「横の関係」が終わったとしても、親子という「縦の関係」が継続する「仕組み作り」こそが、支払う側の「高すぎる」感覚を緩和し、ひいては、養育費の不払い問題の解消にもつながると思います。もちろん、現在でも、養育費というのは、子どもに対して支払われているという「建前」ではありますが、実際に支払った養育費がどのように子どものために使われているかは支払った側には全く分からないわけです。例えば、養育費を受け取った妻(あるいは夫)が、それを子どものために使わずに、新しくできた恋人とのデート費用に使うことも事実上妨げられません。つまり、養育費は、本来、親と子という「縦の関係」のお金であるにもかかわらず、実際上は、別れた夫婦という「横の関係」におけるお金の問題になっています。

 ですので、養育費の本来の目的である親子という「縦の関係」を離婚後も継続するための「仕組み」として、離婚後の共同親権はもちろんですが、離婚後に子どものための別会計を設け、そこに、両親が共に、それぞれの収入に見合った養育費を入れ、その会計は両親が共同管理するのがいいと思います。会計の共同管理をする以上、子どもに対してどのくらいのお金をかけてどういう教育をするかということを協議して決める必要がありますし、自分が支払った養育費が具体的にどのように利用されているかがお互いにクリアになりますので、支払うことへの納得感が出てきます。

 こう言うと、離婚した夫(あるいは妻)と、子どものこととはいえ話などしたくないという人も多いと思いますが、「子どもの教育に関して口出しや干渉はさせたくないけれど、養育費だけは支払え」というのは筋が違うように思います。もちろん、離婚に至った理由や経緯が、元夫(あるいは元妻)の暴力や虐待のような場合は、そもそもそのような親に親権者の資格はありませんので、子どもの教育に口出しをする資格もなく、養育費だけ支払わせればいいのです。

 このように、養育費の支払いというのは、具体的に何に使うかについての意見をあらかじめ反映させる機会が与えられ、かつ、実際の使途を明確にしてもらうべき性質のお金であり、そういう点では税金の支払いに似ているように思います。


養育費・画像.png

続きを読む
posted by 上田孝治 at 16:48 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2019年11月18日

お笑いコンビ・ミキの京都市PRツイートにステマ疑惑(2019年10月31日のニュース)

 「@niftyニュース」によれば、吉本興業は、所属するお笑いコンビ・ミキが京都市についてツイートしたことが、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)と報じられた件について、「ステマには当たらないものと考えております」との見解を報告した、とのことです。

 そもそも、ステマというのは密かに宣伝広告を行うことであり、芸能人等の影響力を持つ人が、事業者から報酬などをもらっていることを示さずに行うパターンや、事業者の関係者が一消費者のフリをして、いわゆる口コミ評価において商品やサービスを高く評価するパターンなどがあります。
 ステマに関する法的な規制として景品表示法の優良誤認や有利誤認がありますが、これはステマ特有の規制をしているわけではありません。消費者庁によれば、『商品・サービスを提供する事業者が、顧客を誘引する手段として、口コミサイトに口コミ情報を自ら掲載し、又は第三者に依頼して掲載させ、当該「口コミ」情報が、当該事業者の商品・サービスの内容又は取引条件について、実際のもの又は競争事業者に係るものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には、景品表示法上の不当表示として問題となる。』とされています。
 景品表示法の規制は、@商品やサービスの内容や取引条件について、実際のものよりも著しくいいものと見せかけていることが必要であること、A景品表示法の不当表示の責任を負うのは、あくまでも「自分の」供給する商品やサービスの取引についての不当表示に限られることがポイントになりますので、ステマの本質である「宣伝広告ではないフリをしつつ実際には宣伝広告を行っていること」そのものを規制するものではありません。
 したがって、ショップが自作自演でレビューを偽装するようなケースでは、実質的には広告であるにもかかわらず、客観的な評価を装うものであり、購入者に対して誤った印象を与えることになりますので、商品やサービスの内容や取引条件について、実際のものよりも著しくよいものと見せかけていれば、景品表示法の不当表示(優良誤認又は有利誤認)にあたる可能性があり、仮に不当表示ということになれば、ショップが、今後同様の違反行為を行わないことなどを内容とする「措置命令」の対象となります。他方で、今回のニュースのようなケースでは、芸能人自体が景品表示法に違反するということにはなりません。
 景品表示法に基づく規制はこのようになっていますが、有名人の方は、望むと望まないとにかかわらず、ステマに利用される危険性が常にあります。利用される危険性があるという意味では、反社会的勢力との接触も同じ問題があります。したがって、有名人の方が所属する会社が事前あるいは事後に適切に対応することはもちろんですが、ご本人も会社任せにするのではなく、常日頃から注意しておかないといけない問題であると思います。
posted by 上田孝治 at 00:00 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2019年11月17日

アイドルグループ「嵐」の公演チケットを高額転売したチケット不正転売禁止法違反の容疑で、女を書類送検(2019年10月24日のニュース)

「時事ドットコムニュース」によれば、送検容疑は、転売目的でインターネット上に定価を超える販売価格を載せ、チケット4席分(定価計3万2000円分)を計42万3000円で転売した疑いで、女は、元々の購入者の身分証明書を偽造し、入場時に提示させたとのことで、チケット不正転売禁止法違反の適用は全国初とのことです。

 チケット不正転売禁止法違反の事例が世の中に山ほどある中で、2019年6月施行の同法がようやく適用になったという印象です。しかし、この書類送検された件は、十数倍という異常な高額の転売であり、身分証明書の偽造までしているという極度の悪質性があったことから適用されたという印象ですので、チケット不正転売禁止法による不正転売の撲滅への道は険しいなというのが率直な感想です。
 そもそも、チケット不正転売禁止法違反の要件は、定価を超える販売であればよく、十数倍もの高額である必要はありませんし、身分証明書の偽造も要件ではありませんので、極度の悪質性などなくても、粛々と適用すべきと思います。
 もっとも、チケット不正転売禁止法の不正転売の要件には、「業として行う」というものがあり、実際に適用する際にこの要件が言い逃れされやすく、速やかに改正が必要であると思います。チケット転売サイトを覗いてみると、「急な仕事」などの言い訳(=業ではない)をしつつ、定価の数倍で転売しているケースが山ほどあります。急な用事ができたので、持っているチケットを自分では使えず転売しないといけないケースがあるとしても、定価(および妥当な実費)で転売できれば十分なわけで、高額転売まで許す理由はないと思います。
 また、日本国外において、外国人が不正転売や不正仕入をする場合が同法の処罰の対象外となっていることも大きな抜け穴になっていると思います。
posted by 上田孝治 at 00:00 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析