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2020年06月14日

《宅建試験対策16》相殺(債権の消滅)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)互いに債務を負っている当事者間において、相殺を行わない旨の特約(相殺禁止特約)がある場合、この当事者は、いずれも相殺をすることができません。
 もっとも、相殺するつもりで債権を譲り受けた者や債務を引き受けた者が、実は相殺禁止特約がついていたことを知らなかったというケースもあり得ます。
 そこで、改正前は、相殺禁止特約について「善意」の第三者には対抗できない、つまり特約を知らずに債権を譲り受けた者や債務を引き受けた者は相殺できるとされていました。これに対して、改正後は、特約について「善意かつ無重過失」の第三者には対抗できないとなりましたので、単に知らないだけでは第三者は保護されず、特約の存在について重過失がない場合にはじめて相殺できることになります。

b)不法行為や債務不履行によって損害が発生した場合、加害者(債務者)は、被害者(債権者)に対して損害賠償債務を負っていることになります。では、このようなケースにおいて、逆に、被害者(債権者)も、加害者(債務者)に対して、何らかの債務を負担している(例えば、加害者からお金を借りていたなど)場合、加害者(債務者)と被害者(債権者)の双方が互いに債務を負担していることになりますので、当然、相殺ができるようにも思われます。
 しかし、相殺は、互いの債務を計算上帳消しにすることですので、実際にはお金を支払わないという特徴があります。となると、損害賠償債務を負っている加害者(債務者)からの相殺を常に認めてしまうと、被害者(債権者)の懐には実際にお金は入ってこないことになり、被害者(債権者)が気の毒なわけです(このような価値判断のことを、「被害者に現実の賠償を受けさせる必要がある」という言い方をします。)。
 そこで、改正前は、ごく単純に、「不法行為に基づく損害賠償債務」を負っている者(加害者)からは、相殺はできないとされていました(難しく言えば、「不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止」ということになります。)。
もっとも、一口に不法行為と言っても、その悪質さには程度の差がありますし、また、不法行為ではなく債務不履行による損害賠償債務ならば相殺を禁止しなくてもいいのかといった問題がありました。
そこで、被害者に現実の賠償を受けさせる必要性の度合いという観点から、相殺禁止の範囲を合理的なものとすべく、@「悪意による不法行為」に基づく損害賠償債務を負っている者(加害者)、または、A「人の生命・身体」の侵害による損害賠償債務(不法行為だけでなく、債務不履行も含む)を負っている者(加害者・債務者)からは相殺できないというルールに改正されることになりました。
 ただし、@・Aのいずれも、被害者に現実の賠償を受けさせるための相殺禁止ですので、損害を被った被害者が損害賠償債権を譲渡した場合には、加害者が、その譲受人(この人は被害者ではありません)に対して相殺することは認められます。
 なお、やや細かい点ですが、@で出てきた「悪意」は、積極的な加害の意欲(俗にいう「害意」)まで必要で、単なる「故意」では足りないとされています。
 このように、改正によって、不法行為に基づく損害賠償債務であっても、加害者側から相殺できる場合が認められることになりました。例えば、「過失」によって他人の「物」を壊してしまった場合、壊した人は、不法行為に基づく損害賠償債務を負うことになりますが、「過失」なので@の「悪意による不法行為」ではありませんし、「物」なのでAの「人の生命・身体」の侵害でもないことから、加害者側からの相殺ができることになります。


債権の消滅・相殺・表1.PNG



債権の消滅・相殺・表2.PNG
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