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2020年05月28日

紀州のドンフアン親族4人 財産寄付の遺言は無効と提訴(2020年5月27日のニュース)

 毎日新聞によれば、「紀州のドンフアン」と呼ばれた資産家で、2018年5月に急性覚醒剤中毒で死亡した和歌山県田辺市の会社社長の兄ら親族4人が、「全ての遺産を市に寄付する」とした遺言書は無効として、和歌山地裁に提訴した、とのことです。

 この件については、亡くなった会社社長に子どもや両親はいなかったようなので、利害関係者としては、会社社長の@配偶者(妻)、A兄弟姉妹、遺産を寄付するとされたB田辺市の三者ということになります。
 また、記事によれば、「和歌山家裁田辺支部が遺言書の要件を満たしていると判断した」とのことですが、これはおそらく、自筆証書遺言の「検認」と呼ばれる手続です。この「検認」は、遺言書の形式的な要件を裁判所が確認して、遺言書の記載内容を保存しておくだけの手続ですので、遺言書を作成したときの遺言者の判断能力がどうであったか、とか、遺言書が実は偽造されていたのではないか、などの実質的な遺言の有効・無効の判断をする手続ではありません。実際上、裁判所での「検認」の手続は、数分で終わるごく簡単なものです。
 したがって、裁判所での「検認」の手続が済んでいても、利害関係者が遺言書の無効を訴えることは何ら問題ありません。
 では、遺言が有効か無効かで、どのような結論の違いが出るのでしょうか。
 まず、遺言が有効な場合は、田辺市が全ての遺産を受け取ることができますが、妻は、(相続欠格や相続廃除になっていなければ)自分には遺留分(いりゅうぶん)があると言って、田辺市に対して、遺産の半分に相当する金銭を支払うように求めることができます。他方で、兄弟姉妹には、法律上、遺留分は認められていません(遺言が優先されるということです)ので、何ももらえないということになります。
 次に、遺言が無効な場合は、田辺市は何ももらうことはできません。無効により、遺言がないのと同じ扱いになりますので、法定相続によることになり、法定相続人(妻と兄弟姉妹)のうち、妻が4分の3、兄弟姉妹が(全体で)4分の1の相続分になります。兄ら親族が、遺言の無効を求めているのは、このためと思われます。
 ということで、田辺市からすれば遺言を有効と認めてもらいたいでしょうし、兄弟姉妹からすれば遺言を無効と認めてもらいたいということになります。なお、妻からすれば、遺言が無効である方が有利ではありますが、仮に有効であっても、遺留分侵害額請求をすれば半分はもらえるということになります。

遺言・画像.png
posted by 上田孝治 at 10:50 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析
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