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2020年07月31日

《宅建試験対策22》請負の報酬と担保責任に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)請負は、仕事の「完成」に対して報酬を支払うという内容の契約です。では、仕事が完成しないまま請負契約が終了した場合(仕事が途中で終わった場合)に、仕事の一部がすでに完了していて、注文者がその部分(履行済みの仕事)によって利益を受けるようなケースで、報酬についてはどう考えればいいでしょうか。   
 この点、改正前は、工事全体が未完成の間に、注文者が請負人の債務不履行を理由に契約を解除する場合、工事内容が可分で、当事者が既施工部分に利益を有するときは、既施工部分については契約を「解除できず」、未施工部分について契約の「一部解除」ができるに過ぎないとした判例がありました。したがって、全体としては完成していなくても、既施工部分は解除ができないことから、既施工部分の報酬を支払わなければならないことになっていました。
 改正により、この判例の考え方がおおむね条文化されることになりました。具体的には、仕事全体が完成しないまま、請負契約が、以下の2つのケースにより途中で終了したものの、注文者が履行済みの仕事によって利益を受ける場合、その部分は仕事が「完成」したものと扱い(いわば「一部完成」)、請負人は、注文者が受ける利益の割合に応じた報酬請求ができることになりました。
《ケース@》 注文者に帰責事由がなく、仕事の完成ができなくなった場合(つまり、双方に帰責事由がない、もしくは請負人に帰責事由がある場合)。このうち、請負人に帰責事由がある場合は、別途、債務不履行に基づく損害賠償の問題が生じます。
 なお、注文者の帰責事由によって仕事の完成ができなくなった場合、請負人は、報酬「全額」を請求できますが、自分の債務を免れたことによる利益(かからなくなった材料代など)は注文者に償還する必要があります。この処理は、請負の規定ではなく、危険負担に基づくもので、改正前も同様に解されていました。
《ケースA》 請負が仕事の完成前に解除された場合。もっとも、請負人や注文者に帰責事由がある場合は、別途、債務不履行に基づく損害賠償の問題が生じます。

b)請負人の担保責任について、改正前は、仕事完成「後」の請負人の特別の責任として担保責任が定められており、具体的には、注文者は、修補請求、解除、損害賠償請求ができるとされていました。もっとも、建物などの土地の工作物については、契約目的を達成できないような瑕疵があっても解除できないとされていました。
 さらに、担保責任の期間制限として、原則、引渡もしくは仕事終了時から1年、土地工作物は引渡後5年(非堅固)もしくは10年(堅固)というものがありました。
 これに対して、改正により、請負契約の種類や品質が不適合であった場合、仕事の完成前後を問わず、請負人の契約不適合責任として、売買の担保責任の規定を準用することになりました。具体的には、注文者は、追完請求(修補など)、報酬減額請求、解除、損害賠償請求ができ、建物などの土地の工作物であっても要件を満たせば解除ができることになりました。
 また、期間制限についても売買と同様で、請負人が悪意・重過失の場合を除き、注文者が知った時から1年以内に「通知」をすることで担保責任を追及できる権利が保存され、一般的な消滅時効の期間内(知った時から5年以内、引渡もしくは仕事終了時から10年以内)に権利行使すればよいことになりました。
 以上のとおり、改正前の請負の担保責任における独特のルールはすべてなくなり、改正後は、売買の担保責任と同様に考えればよいため、試験対策上は楽になります。


請負・表1.PNG
請負・表2.PNG


請負・表3.PNG

2020年07月28日

不動産取引時の重要事項説明の対象として、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地を追加

 大規模水害が頻発する中、不動産取引に際しては、水害リスクについての情報が重要な要素となっています。そこで、国土交通省は、2019年7月に、不動産関連団体を通じて、不動産取引時にハザードマップを提示し、取引の対象となる物件の位置等について情報提供するよう協力を依頼していました。
 今般、宅建業法施行規則の改正を行い、売買・賃貸を問わず、重要事項説明の対象項目に「水害ハザードマップにおける対象物件の所在地」を追加し、説明が義務づけられることになりました。施行日は、2020(令和2)年8月28日(金)です。
 なお、ガイドラインも改正され、具体的な説明方法として
 @水防法に基づき作成された水害(洪水・雨水出水・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示すこと
 A市町村が配布する印刷物又は市町村のホームページに掲載されているものを印刷したものであって、入手可能な最新のものを使うこと
 Bハザードマップ上に記載された避難所について、併せてその位置を示すことが望ましいこと
 C対象物件が浸水想定区域に該当しないことをもって、水害リスクがないと相手方が誤認することのないよう配慮すること
などが追加されました。


posted by 上田孝治 at 09:33 | TrackBack(0) | 不動産・宅建コラム

2020年07月24日

《宅建試験対策21》賃借物の修繕と一部滅失等による賃料の減額に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)賃貸借契約において、賃貸人は、賃借人に対して、目的物を使用収益させる義務を負っており、その結果として、必要な修繕をする義務を負うことになります。
 この点、「賃借人」の責めに帰すべき事由によって賃借物の修繕が必要となった場合にまで賃貸人が修繕義務を負うかについては、改正前は規定がありませんでした。
 しかし、改正により、「賃借人」の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合は、賃貸人は修繕義務を負わないことになりました。

b)賃貸借契約において賃借物を修繕できるのは、本来的には賃借物の管理権限を有する賃貸人だけのはずです。したがって、改正前は、「賃借人」が修繕できる場合についての規定はありませんでした。
 しかし、改正により、例外的に賃借人が修繕できる場合(賃借人の修繕権限)が2つ認められました。1つ目は、賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知し、又は賃貸人がその旨を知ったにもかかわらず、賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないときで、2つ目は、急迫の事情があるときです。
 なお、修繕が必要となった理由が、賃借人の責めに帰すべき事由によるかどうかを問わず、これらの2つの賃借人による修繕は可能です。もっとも、賃借人の責めに帰すべき事由によって修繕が必要となった場合(=「賃貸人」に修繕義務がない場合)に、賃借人が修繕を行っても、賃貸人に対する費用償還請求権は発生しません。

c)賃借物の一部滅失などによって、賃借物の利用ができなくなった場合の賃料の扱いについて、改正前は、賃借人の過失によらずに賃借物が「一部滅失」したときは、賃借人は、滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を「請求」できるとしていました。
 これに対して、改正後は、賃借物の一部滅失の場合だけでなく、その他の事由により「使用収益できなくなった」場合も、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、使用収益できなくなった部分の割合に応じて、「当然に」(=請求によってではなく)減額されることになりました。

賃借物の修繕・表1.PNG


賃借物の修繕・表2.PNG

2020年07月19日

《宅建試験対策20》賃貸借契約の存続期間、不動産の賃貸人たる地位の移転に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)賃貸借契約において期間を定める場合の期間の上限について、改正前は20年とされていました。しかし、20年を超えるような期間のニーズがあることから、改正により、上限は50年となりました。
 なお、期間を定めない賃貸借契約は引き続き認められますし、「最短」期間(下限)についての制限がないことは改正前後で変わりません。

b)賃貸不動産の所有権移転に伴って、賃貸人の地位が移転するケースに関しては、改正前は直接の条文は存在せず、判例により様々なルールが定められていました。
 まず、不動産賃貸借契約における賃貸人の地位の移転については、特段の事情のある場合を除き、「賃借人の承諾を必要とせず」、旧所有者と新所有者間の契約によってすることができるとされていました。
 また、「対抗要件を備えた」賃借権が設定された不動産の譲受人は、「特段の事情がない限り」、譲渡人から賃貸人の地位を承継するとされていました。この点、譲渡人と譲受人との間で、賃貸人の地位を譲渡人に留保する合意をしたとしても、直ちに「特段の事情あり」とは言えないとして、賃貸人の地位は移転するというのが判例の考え方(留保の合意の効力を否定する考え方)でした。これは、賃貸人の地位が移転しないことになると、賃借人は知らぬ間に転借人の立場に立たされ、地位が不安定になるからという理由です。
 改正により、これらの判例ルールをおおむね条文化しましたが、いくつか異なる内容もあります。以下で、改正後のルールについて賃借人に対抗要件がない場合とある場合とで分けて説明します。
 まず、賃借人に「対抗要件がない」場合、不動産の譲渡があっても、原則として、譲受人は、賃貸人たる地位を引き継ぎません(「売買は賃貸借を破る」という考え方です)ので、譲受人は、賃借人に対して明け渡しを求めることができます。
もっとも、賃借人に対抗要件がない場合でも、譲渡人と譲受人との「合意」によって、賃貸人の地位を譲受人に引き継がせることは可能で、この際に、賃借人の承諾は、例外なく(この点は判例とは異なります)必要ありません。
 他方で、賃借人に「対抗要件がある」場合、不動産の譲渡があれば、原則として、賃貸人の地位も譲受人に移転することになります。
 もっとも、不動産の譲渡人と譲受人が、@賃貸人の地位を譲渡人に留保し、かつ、Aその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸するという「合意」をしたときは、例外的に、賃貸人の地位は、譲受人に移転しません。つまり、これまでの判例とは異なり、留保の合意の効力を認めました。結局、留保の合意があった場合、@譲渡人と譲受人の間では賃貸借関係が、譲渡人と賃借人との間では転貸借関係が成立することになります。
 この点、判例が留保の合意の効力を否定する理由としていた、賃借人が、転借人という不安定な地位におかれてしまうという点をケアするために、仮に、賃貸不動産の譲渡人と譲受人(その承継人を含む)との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人の地位が、譲受人に移転することにしました。よって、賃借人は、譲渡人と譲受人の賃貸借が終了した後も、引き続き、賃借人として不動産を利用することができます。

賃貸借・表1.PNG


賃貸借・表2.PNG

2020年07月11日

《宅建試験対策19》使用貸借契約の成立と終了に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)使用貸借契約は、ただで(無償で)物を貸す契約のことで、無償契約ゆえに、賃貸借契約と比べて、借主の立場が弱いのが特徴です。
 そして、改正前は、使用貸借契約が「成立」するためには、物の引渡しが必要とされており、合意だけではそもそも使用貸借契約は成立しませんでした(このような契約を「要物契約」といいます)。
 しかし、改正によって、使用貸借契約は「諾成契約」となり、当事者の合意だけで契約が成立することになりました。つまり、「ただで貸すよ」という口約束をしただけでも、使用貸借契約は成立し、貸主は、借主に対して物を引き渡す義務を負うことになります。
 とは言え、使用貸借契約は無償契約ですので、口約束をしただけで「強い」拘束力を認めるのは貸主にかわいそうであることから、@書面によらない使用貸借であれば、A物の受け渡しがあるまでの間、貸主は契約を解除することができます。これは、同じく無償契約である「書面によらない贈与」の解除権と同様の趣旨の規定と言えます。

b)使用貸借における借主は、ただで物を借りて使用収益できる立場にあります。
 そして、使用貸借の借主については、改正前から、借主の死亡によって契約が終了する(つまり、使用借権は相続されない)旨の規定がありました。
 これに加えて、改正後は、使用貸借契約が書面でされたかどうか、使用期間や使用収益をする目的が定められたかどうかにかかわらず、「借主の側から」は、いつでも契約を解除できる旨の規定が新設されました。


使用貸借・表1.PNG


使用貸借・表2.PNG