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2020年06月20日

《宅建試験対策17》解除・危険負担(契約総則)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)債務不履行があった場合に、債権者が取ることができる手段として、契約関係を消滅させて自分自身の債務をなくす「契約の解除」と、債務不履行による損害を相手方に支払わせる「損害賠償請求」の2つがあります。
 この2つのうち、契約を解除するための要件として、改正前は、損害賠償請求と同様に「債務者の帰責事由」が必要とされていました。
 しかし、改正後は、契約の解除に「債務者の帰責事由」は不要(=債務者に落ち度がなくても、債権者は、契約を解除できる)とされました。もっとも、「債権者」の帰責事由による債務不履行の場合まで、債権者による解除はできません。なお、損害賠償請求については、債務者の帰責事由が必要なことは改正前後で変わりません。
 また、改正前から、判例によって、債務不履行の部分がわずかの場合や、付随的義務の不履行については契約の解除が認められていませんでした。そこで、改正により、この判例の考え方を前提に、債務不履行が「軽微」なときは解除ができないことが明文化されました(したがって、この点は、実質的な変更ではありません)。

b)双務契約(契約当事者双方が債務を負う契約)において、一方の債務が当事者双方の帰責事由によらずに履行不能となった場合に、履行不能になっていない方の債務(反対債務)をどのように扱うかというのが「危険負担」の問題です。
 この点、改正前は、原則として、反対債務も「消滅」するとしつつ、特定物の売買契約などの場合には、例外的に反対債務は消滅しない(反対債務を履行しなければならない)とされていました。
 ところが、aで述べたとおり、解除の要件に関して、債務不履行で契約を解除するために、債務者の帰責事由はいらないという改正がなされました。そうであれば、危険負担のケースにおいても、債権者は契約を解除して、契約関係を消滅させることができることになります。つまり、改正「前」の危険負担の効果(原則として、反対債務が消滅する)と改正「後」の解除の効果(解除により反対債務を消滅させる)は、ダブってしまうわけです。
 そこで、改正後は、反対債務を消滅させる役割は「解除」に任せ、「危険負担」は、反対債務の「履行を拒絶」できるという効果に変わりました。
 また、改正前の危険負担の例外ルール(特定物の契約などの場合)によると、例えば、中古住宅(=特定物)の売買契約をして、まだ引き渡しを受ける前の段階で、天災により住宅が滅失したような場合に、買主は売買代金を支払わないといけない(反対債務を履行しなければならない)という結論になりますが、このような結論が妥当ではないという意見が強くありました。そこで、改正により、この特定物の契約に関する例外ルールも削除されることになりました。
 結局、双務契約において、一方の債務が当事者双方の帰責事由によらずに履行不能になった場合、債権者は「解除」により契約関係を消滅させることができますが、解除する前であっても、危険負担の規定によって、自らが負っている反対債務の履行を拒むことができることになったわけです。



解除・危険負担・表.PNG

2020年06月19日

《不動産・マンション管理》新型コロナウイルス対応のためのサイト紹介(随時更新)

新型コロナウイルス感染症による影響を受けた不動産業者が活用できる、「中小企業・小規模事業者に対する政府系金融機関等による融資・資本増強」や「中小企業・小規模事業者に対する民間金融機関による融資等」といった支援メニューの概要とリンクがまとめられたもの


不動産業者の事務所や案内所等(モデルルーム・現地販売所等を含む。)取引物件の現場において、各事業者の取引等の実態に応じた新型コロナウイルス感染予防対策を行う際の基本的事項について、参考として整理したもの


  【賃貸借契約の当事者向け】
  1. 新型コロナウイルス感染症の影響で売上が減少し,現在借りている建物の家賃が払えなくなってしまいました。すぐに退去しなければならないのですか。
  2. 新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し,今後,家賃を払い続ける見通しが立ちません。家賃の減額や支払猶予等について,オーナーと交渉することはできないのでしょうか。
  3. テナントが新型コロナウイルス感染症の影響により営業を休止することとなった場合,賃料が減額されることにはならないのですか。

  【マンション管理組合向け】
集会の開催について、ITをどのように活用できるか、ITを活用した理事会開催の方法などについてのQ&Aがまとめられています

  【宅建業者向け】
  • 当面の間、専任の宅地建物取引士が在宅勤務(テレワーク)をしている場合であっても、宅建業法第31条の3第1項の規定に抵触しないものとして取り扱うこと
  • 在宅勤務(テレワーク)を実施した場合における宅建業法施行規則の規定による標準媒介契約約款の規定のうち、@依頼者への業務の処理状況の報告方法、A媒介契約の更新時の申出方法に関する考え方

「新型コロナウイルス感染症に係る対応について(補足その2)」(2020年4月17日付)《国土交通省土地・建設産業局 不動産業課長 不動産市場整備課長》
  【賃貸事業者やテナント事業者向け】
  • テナントの賃料を免除した場合の損失の税務上の損金算入について
  • 国税・地方税・社会保険料の猶予措置について
  • 固定資産税等の減免措置について
  • セーフティネット保証5号の対象業種への追加について
  • 政府系金融機関、民間金融機関による実質無利子・無担保の融資
  • 新型コロナウイルス感染症の影響により、売上が前年同月比で50%以上減少している事業者に対する持続化給付金(法人は200万円以内、個人事業者等は100万円以内)の支給
  • 税・社会保険・公共料金の猶予

  • 住宅ローン減税の適用要件の弾力化(住宅ローン減税の控除期間13年間の特例措置、既存住宅を取得した際の住宅ローン減税の入居期限要件)
  • 次世代住宅ポイント制度の申請期限

  【中小企業向け支援メニュー】
    @信用保証協会による保証
      〇セーフティネット保証4号(5号と合わせて 2.8 億円)
      〇セーフティネット保証5号(2.8 億円)
      〇危機関連保証(2.8 億円)
    A日本政策金融公庫中小企業事業(不動産業のうち住宅及び住宅用の土地の賃貸業は対象外)
      〇新型コロナウイルス感染症特別貸付(別枠3億円)
      〇セーフティネット貸付・経営環境変化対応資金(7.2 億円)
    B商工組合中央金庫
      〇危機対応業務「新型コロナウイルス感染症特別貸付」(3億円)

  【マンション管理組合向け】
  • 組合員に対し、総会会場に来場することなく、議決権行使書又は委任状により、議決権を行使してもらうことを、通知又は個別連絡により勧める
  • 通常総会を開催せずに決議を行う方法として、@区分所有者全員の承諾がある場合の書面又は電磁的方法による決議、A決議すべき事項について、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意のいずれかの方法がある
  • 管理規約に通常総会の開催を延期して行う規定がない管理組合であっても、緊急時の対応として、やむを得ず期間を超えて総会を延期せざるを得ないと判断する場合には、理事会で通常総会の開催を延期することを決議する方法が考えられる


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2020年06月16日

《兵庫県内の事業者向け》新型コロナウイルス対応のためのサイト紹介(随時更新)

兵庫県労働局による労働問題(労働条件、安全衛生、雇用の維持・確保に関する助成金等)に関する特別相談窓口

  • 新型コロナウイルス感染症対応資金、新型コロナウイルス感染症保証料応援貸付【セーフティネット保証(4号、5号)、危機関連保証の認定を取得した中小企業者、個人事業主】
  • 新型コロナウイルス対策貸付【最近1か月間の売上高が前年同期に比べて(一般保証、セーフティネット保証を利用する場合。セーフティネット保証4号を利用する場合は20%)5%以上減少している方】
  • 新型コロナウイルス危機対応貸付【最近1か月間の売上高が前年同期に比べて15%以上減少している方(危機関連保証の認定取得が要件)】
  • 借換等貸付(新型コロナウイルス対策)【県制度融資等の借入残高があり、既往債務の負担軽減が必要な方(新型コロナウイルス対策貸付と同様、最近1か月間の売上高が前年同期に比べて5%以上減少していることが必要)】
  • 経営活性化資金(新型コロナウイルス対策)【速やかな資金調達が必要な方(新型コロナウイルス対策貸付と同様、最近1か月間の売上高が前年同期に比べて5%以上減少していることが必要)】

尼崎市の事業者や労働者向けに、以下の情報がまとめてあります。
 @新型コロナウイルスに関する相談窓口(事業者向け)
 Aテナント事業者向け「緊急つなぎ資金」貸付制度
 B新型コロナウイルスに関する融資支援(事業者向け)
 C新型コロナウイルスに関する助成金等その他の支援情報(事業者向け)
 D小規模事業者持続化補助金(一般型、コロナ特別対応型)
 E労働者向け相談窓口について
 F助成金等その他支援

新型コロナウイルスの影響を受ける恐れがある神戸市内の中小企業・小規模事業者に役立つ情報(資金繰り、補助金・給付金・支援金、雇用を守る(休業手当等)、相談窓口、税・使用料の支援、販路開拓・公募事業)がまとめられています。

新型コロナウイルス感染症で影響を受ける西宮市の事業者・従業員の皆様にご活用いただける支援策・相談窓口の情報がまとめられています。



2020年06月14日

《宅建試験対策16》相殺(債権の消滅)に関する民法改正

≪改正されたポイント≫
a)互いに債務を負っている当事者間において、相殺を行わない旨の特約(相殺禁止特約)がある場合、この当事者は、いずれも相殺をすることができません。
 もっとも、相殺するつもりで債権を譲り受けた者や債務を引き受けた者が、実は相殺禁止特約がついていたことを知らなかったというケースもあり得ます。
 そこで、改正前は、相殺禁止特約について「善意」の第三者には対抗できない、つまり特約を知らずに債権を譲り受けた者や債務を引き受けた者は相殺できるとされていました。これに対して、改正後は、特約について「善意かつ無重過失」の第三者には対抗できないとなりましたので、単に知らないだけでは第三者は保護されず、特約の存在について重過失がない場合にはじめて相殺できることになります。

b)不法行為や債務不履行によって損害が発生した場合、加害者(債務者)は、被害者(債権者)に対して損害賠償債務を負っていることになります。では、このようなケースにおいて、逆に、被害者(債権者)も、加害者(債務者)に対して、何らかの債務を負担している(例えば、加害者からお金を借りていたなど)場合、加害者(債務者)と被害者(債権者)の双方が互いに債務を負担していることになりますので、当然、相殺ができるようにも思われます。
 しかし、相殺は、互いの債務を計算上帳消しにすることですので、実際にはお金を支払わないという特徴があります。となると、損害賠償債務を負っている加害者(債務者)からの相殺を常に認めてしまうと、被害者(債権者)の懐には実際にお金は入ってこないことになり、被害者(債権者)が気の毒なわけです(このような価値判断のことを、「被害者に現実の賠償を受けさせる必要がある」という言い方をします。)。
 そこで、改正前は、ごく単純に、「不法行為に基づく損害賠償債務」を負っている者(加害者)からは、相殺はできないとされていました(難しく言えば、「不法行為により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止」ということになります。)。
もっとも、一口に不法行為と言っても、その悪質さには程度の差がありますし、また、不法行為ではなく債務不履行による損害賠償債務ならば相殺を禁止しなくてもいいのかといった問題がありました。
そこで、被害者に現実の賠償を受けさせる必要性の度合いという観点から、相殺禁止の範囲を合理的なものとすべく、@「悪意による不法行為」に基づく損害賠償債務を負っている者(加害者)、または、A「人の生命・身体」の侵害による損害賠償債務(不法行為だけでなく、債務不履行も含む)を負っている者(加害者・債務者)からは相殺できないというルールに改正されることになりました。
 ただし、@・Aのいずれも、被害者に現実の賠償を受けさせるための相殺禁止ですので、損害を被った被害者が損害賠償債権を譲渡した場合には、加害者が、その譲受人(この人は被害者ではありません)に対して相殺することは認められます。
 なお、やや細かい点ですが、@で出てきた「悪意」は、積極的な加害の意欲(俗にいう「害意」)まで必要で、単なる「故意」では足りないとされています。
 このように、改正によって、不法行為に基づく損害賠償債務であっても、加害者側から相殺できる場合が認められることになりました。例えば、「過失」によって他人の「物」を壊してしまった場合、壊した人は、不法行為に基づく損害賠償債務を負うことになりますが、「過失」なので@の「悪意による不法行為」ではありませんし、「物」なのでAの「人の生命・身体」の侵害でもないことから、加害者側からの相殺ができることになります。


債権の消滅・相殺・表1.PNG



債権の消滅・相殺・表2.PNG

2020年06月12日

アンジャ渡部“トイレ不倫”…ヒルズ側が被害届出せば「建造物侵入罪」の可能性も(2020年6月12日のニュース)

 Yahoo!ニュースによれば、お笑いコンビ「アンジャッシュ」の渡部建が六本木ヒルズの地下駐車場にある多目的トイレで性行為に及んでいたと週刊文春に報じられたことを受け、若狭勝弁護士は、六本木ヒルズ側が被害届などを出した場合に「建造物侵入罪にあたる可能性がある」と指摘した、とのことです。

 まず、建造物侵入罪は刑法130条前段に規定されている犯罪で、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入」した場合に、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金になるとされています。
 そして、渡部さんの件に関係する建造物侵入罪の要件としては、@「建造物」、A「侵入」の2点があります。
 まず、「建造物」とは、屋根があり、柱などで支えられ、土地にくっついていて、人が出入りできる構造をもつもののうち住宅や邸宅以外を指し、建造物の一部(会議室、トイレなど)であっても「建造物」と言えます。
 次に、「侵入」とは、諸説ありますが、一般的には、居住者や管理者などの管理権者の意思ないし推定的意思に反する立ち入りのことを言うとされています。今回のケースのように、一般客が集まることが予定されている場所への侵入については、社会通念上一般に許される範囲の立ち入りであれば、管理権者の包括的な同意があったと言え、侵入にはあたらないことになります。具体的には、最高裁昭和58年4月8日判決において、管理権者があらかじめ立入り拒否の意思を積極的に明示していない場合であっても、「建造物の性質、使用目的、管理状況、管理権者の態度、立入りの目的などからみて、現に行われた立入り行為を管理権者が容認していないと合理的に判断されるとき」は、建造物侵入罪が成立するとされています。
 これを多目的トイレにあてはめてみると、多目的トイレは、特に、身体障害者の方や小さいお子さんのいる方のためのトイレやおむつ替えなどのための施設であり、管理権者がそこでの性行為を容認しているとは到底考えられません。したがって、性行為目的で多目的トイレに入ることは、意思に反する立ち入りとなり、「侵入」にあたると言えます。似たような話として、盗撮目的で商業施設のトイレに入った場合も、やはり「侵入」となります。というわけで、渡部さん(その相手も)には、建造物侵入罪が成立するということになります。
 蛇足ですが、どうしてもトイレで性行為をしたければ、管理権者の意思に反しないことに留意しないといけませんので、「一人暮らしの自宅トイレでどうぞ」ということになります(それだと意味がないのかもしれませんが・・・。)。
 さらに蛇足として、夫(あるいは妻)が、妻(あるいは夫)のいない間に自宅に不倫相手を連れ込んで・・・という場合が住居侵入罪にあたるかは争いがありますが、「現実に在宅」する者の意思を基準とすれば、住居侵入罪は不成立になります。また、一口に「住居」と言っても、「○○の部屋」という領域ごとに分けて考えることもできますので、他の部屋に立ち入らなければ住居侵入罪は不成立という考え方もあります(娘が親の反対を押し切って彼氏を自分の部屋に入れるようなケースです。)。
なお、住居の管理権者とは誰かという点について、住居の登記上の名義はさほど重要ではありません。例えば、東京高裁昭和58年1月20日判決は、妻と長らく別居していた夫が、妻の住む自己所有の家屋へ、妻の不貞行為を現認する目的で、その意思に反して、前から所持していた合鍵を使って玄関から立ち入ったケースにおいて、住居侵入罪の成立を認めています。


posted by 上田孝治 at 14:51 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析