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2020年02月18日

東京マラソン 一般参加中止を正式発表 参加料返金せず(2020年2月17日のニュース)

 「YAHOO! ニュース」によれば、東京マラソン財団は、新型コロナウイルスによる肺炎の影響を考え、東京マラソンについて、一般参加者の出場は取りやめ、エリート選手のみで実施し、規約に基づき参加料は返金せず、特例として来年大会の出走権を与えるが、来年エントリーする場合は別途参加料が必要となる、と発表したとのことです。

 まず、このような扱いを法律的にどう考えればよいかですが、新型コロナウイルスにより一般参加を中止すること自体はやむを得ないと思われ、中止という結果は、参加者はもちろん主催者の落ち度でもありません。
 そして、民法という法律では、このような、契約当事者のいずれが悪いわけでもない形で、契約内容が実現不可能(イベントの中止)になった場合の処理ルールとして、「危険負担」というものがあります。この民法の危険負担ルールによれば、今回のようなイベントへの参加という種類の契約では、実現できなくなったイベントの対価については支払わなくてもよいことになっており、すでに支払済みの参加料は、危険負担ルールにより支払わなくてもよいお金なので、返還を求めることができることになります。
 もっとも、この民法の危険負担ルールというのは、契約当事者が別のルールを契約で決めてしまえばそちらの方が優先するという規定(こういうものを「任意規定」といいます。)ですので、主催者が「規約」において、民法の危険負担ルールと違うルールを定めていれば、規約の方が優先することになります。したがって、(詳細は分かりませんが)規約によれば、参加料が返金されないケースにあたるということであれば、民法の危険負担ルールはさておき、規約に従って参加料は返金されないということになります。
 ところが、今回の東京マラソンへの一般参加というのは、主催者である「一般財団法人東京マラソン財団」という事業者と、一般ランナーという「消費者」との間の「消費者契約」になりますので、いくら事業者が「規約」でルールを定めていても、その内容によっては、「消費者契約法」という法律によって、規約の内容が「無効」(法律的に効力がない)になる場合があります。具体的には、消費者契約法10条には、民法のルールと比べて消費者に不利な内容で、その不利の程度が著しい条項は無効になるという規定がありますので、民法の危険負担ルールと比べて参加者に不利になっている本件の規約は、消費者契約法で無効とされる可能性があります。そして、仮に、規約の定めが「無効」になると、規約の当該部分の効力はなくなりますので、結局、民法の危険負担ルールに従った処理(参加料の返還を求めることができる)となります。
 ということで、少しややこしいですが、法律の力関係は、以下のようなイメージになります。

   消費者契約法(規約の無効) > 規約 > 民法の危険負担ルール

 ちなみに、参加料は国内が1万6200円、海外が1万8200円ということで比較的少額なので、個々の参加者の方が一人ずつ裁判所などで争っていくのはコスパが悪い案件です。そこで、このような場合に、「消費者裁判手続特例法」という法律に基づく、「特定適格消費者団体」(現在、全国で、東京、埼玉、大阪の3団体があります。)による集団的消費者被害回復制度というのがありますので、もしかしたら、この制度が使われることになるかも知れません。念のため、最後に集団的消費者被害回復制度に関する消費者庁のサイトのリンクを張っておきます。 

 消費者団体訴訟制度(消費者庁サイト)
posted by 上田孝治 at 19:17 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年02月12日

2020年4月から、不動産賃貸借契約における連帯保証人の極度額をいくらにすればよいか?

 2020年4月から、いよいよ改正民法がスタートします。改正の中には、個人根保証において極度額(要するに、「保証人の責任は〇万円まで」という上限)を定めていない場合、個人根保証契約を無効とする(つまり、保証人として責任を負わなくてよい)という規定があります。
 不動産賃貸借契約で言えば、これまでは特に上限を定めない形で、賃借人の身内や知人などの個人が連帯保証人となり、賃料の滞納などがあった場合には、保証人に支払をしてもらうということが当たり前でした。しかしながら、2020年4月以降は、賃貸借契約においてこれまでのような上限の定めのない個人の連帯保証では保証契約として無効となりますので、保証人がいないのと同じことになってしまいます。
 そこで、保証契約において極度額を定めるとして、具体的にどのくらいの額にすればよいのかは非常に悩ましいところです。この点に関して、一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会(全宅管理)が、会員を対象としたアンケート調査を実施し、その調査結果が公表されました。これによると、賃料5万円と仮定した場合、30万円以下が16%、30万円超〜60万円以下が25%、60万円超〜120万円以下が30%、120万円超〜180万円以下が4%、180万円超が5%で、多くの会員が「賃料の2年分である120万円」もしくは「賃料の1年分である60万円」と回答したとのことです。ただ、中には、「借主が火災保険に無加入である場合は、万一の損害に備えてある程度の金額は必要」という理由で、2000万円という回答もあったようです。
 というわけで、アンケートの結果からは、賃料の2年分までが相場ということになりそうですので、実務的にはこのような流れになると思います。もっとも、民法上は、極度額を定めればいいとされているだけで、金額的にいくらまででなければならないという制限は明記されていません。となると、「大は小を兼ねる」で、とにかく高めに極度額を設定しておけばいいのではないかと思われる方もいるかもしれませんが、あまりにも極度額が高額過ぎる(この線引き自体がまた難しいのですが・・・)ということになると、極度額の定め自体が公序良俗違反などで効力が否定されることになり、結局、保証契約が無効になってしまうリスクがあります。
 なお、改正民法は、基本的に2020年4月以降の契約に適用がありますので、逆に言えば、2020年3月以前の契約については改正前の民法のルールに従うことになります。悩ましいのは、2020年3月以前の賃貸借契約が4月以降に更新された場合ですが、保証契約について「合意による更新」があった場合は、新たな契約と評価して改正民法に従うことになり、自動更新の場合は、新たな契約とは評価できずに、改正前民法に従うことになるのではないかと思います。
posted by 上田孝治 at 22:20 | TrackBack(0) | 不動産・宅建コラム

2020年02月06日

高校生が自転車で死亡事故を起こし、約9000万円の賠償命令(2020年2月6日のニュース)

 ライブドアニュース(共同通信)によれば、高知市で2015年、当時高校生の男性が自転車で警察官に衝突し死亡させた事故を巡り、遺族が男性に損害賠償を求めた訴訟の判決で高知地裁が約9400万円の支払いを命じた、とのことです。

 高校生が、何か悪いことをやって誰かに危害を加えた場合、被害者(被害者が亡くなった場合はその遺族)は、その高校生に対して、不法行為を根拠として損害賠償請求をすることができます。もっとも、被害額がある程度大きくなる場合には、いくら高校生に損害賠償義務があると言ったところで、実際上、支払が困難ということになります(なお、加害者側が、個人賠償責任保険などの保険に加入していればそこから支払われるケースもあります。)。
 こういった場合、被害者の損害賠償請求を実のあるものにするために、比較的資力のある「高校生の親」に責任を負わせることが考えられます。
 この点、その高校生が日常的に悪いことを行っていた(いわゆる素行不良)にもかかわらず、親が漫然と放置した結果、案の定、危害が加えられたような場合は、親自身の損害賠償責任が認められる可能性があります。
 では、親が、素行不良の子どもを漫然と放置していたというような事情がない場合はどうなるかというと、民法には監督義務者の責任の規定があります。これは、未成年者が「責任能力を欠く」と評価できる場合、未成年者本人は損害賠償責任を負わない代わりに、特別の事情がない限り、監督義務者(通常は親)が肩代わり的な責任を負うというものです。そして、実務上、未成年者が責任能力を欠いているかどうかについては、おおむね12〜13歳以上であれば責任能力ありとされています。
 以上をアバウトにまとめると、小学生くらいまでの子どもが何か悪いことをすれば、子ども本人は責任を負わない代わりに、親が、原則として損害賠償責任を負うのに対して、中学生以上が何か悪いことをしても、親が漫然と放置していたような事情がない限り、親は損害賠償責任を負わないということになります。
posted by 上田孝治 at 23:33 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年02月05日

遺言を撤回したいときにどうするか?

 遺言は、一度作ったとしても、いつでも簡単に撤回することができますが、撤回の方法としては4つ考えられます。
 1つ目は、新しく遺言を作り、その中で、前の遺言の全部または一部を撤回するという方法です。
 2つ目は、新しく遺言を作り、その中で、前の遺言を撤回するとははっきり書かずに、内容的に前の遺言と抵触(矛盾)する内容とする方法です。この場合、撤回されるのは、前の遺言の「全部」とは限らず、内容的に抵触(矛盾)する部分に限られます。
 3つ目は、遺言に書いた内容と抵触(矛盾)する行為をする方法です。例えば、遺言で「○○の不動産をAに相続させる」と書いているにもかかわらず、その不動産を生前に売却するようなケースです。
 4つ目は、遺言書を故意に破棄する方法です。
 以上のように、@遺言による撤回、A矛盾する遺言、B矛盾する行為、C遺言書の破棄の4つの方法がありますが、実際には、撤回したい遺言書をきっちりと破棄して、新しい遺言書を作成するのがいいと思います。
posted by 上田孝治 at 23:48 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム