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2020年01月27日

遺産狙いの結婚を見破る(?)一つの質問

 遺産狙いで資産家の高齢者と親しくなり、あの手この手で多額の遺産を手に入れるという話は、世間一般のみならず、仕事上もときどき耳にします。
 かつて「後妻業」という形で話題にもなりましたが、こういう話において、犯罪手段によらずに、遺産を手に入れるルートとしては大きく2つあります。
 1つ目は、遺言を作成してもらうルートです。この「遺言ルート」は、結婚していなくても可能な方法ですが、何と言っても、資産家本人の意思に基づいて遺言を作成してもらわなければ始まりません。特に、高齢者が認知症などで判断能力が乏しい場合、公正証書遺言であれば、そもそも公証人から作成を断られるケースもありますし、自筆証書遺言であれば、その有効性をめぐって法定相続人である親族との争いが生じる可能性が高くなります。また、仮に有効な遺言を作成していたとしても、法定相続人から遺留分侵害額請求を受けることで、受け取れる額が減る可能性もあります。
 2つ目は、結婚をするルートです。「結婚ルート」によれば、遺言など全くなくても、配偶者として、当然に一定額を受け取れることになりますので、遺産を手に入れたい側としては確実な方法と言えます。もちろん、結婚しても、その後に離婚してしまえばこの方法も終わりですが、片方が離婚を拒否している場合、浮気や暴力などの特別の事情がない限り、なかなか離婚は認められません。また、結婚している場合、「配偶者には一円も渡さない」という遺言を作成することはできますが、その場合でも配偶者には遺留分がありますので、遺言むなしく、一定額は配偶者の手に渡ってしまうことになります。
 というわけで、資産家の高齢者が結婚してしまうと、結婚後に「実は後妻業的な話だった」と分かっても、基本的には後の祭りということになります。
 なお、遺留分については、生前に家庭裁判所で手続をして、裁判所の許可をもらって放棄することができますので、遺留分の生前放棄を条件として結婚するというやり方も考えられなくはありません。しかし、遺留分放棄の許可には、放棄の代償のようなものが必要とされますので、「結婚する」というだけでは代償とは言えず、裁判所の許可はもらえないと思います。もっとも、実際上は、結婚の話が出た際に、資産家の方から「結婚した場合、遺留分の生前放棄をお願いしたい・・・」などと言うと、後妻業的な人であれば勝手にフェードアウトするような気もしますので、このような質問をすることは、遺産狙いの結婚かどうかを見破るためのリトマス試験紙としての意味はあるかもしれません。
posted by 上田孝治 at 14:19 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム