カテゴリ

2020年01月29日

遊具事故で保育所側に賠償命令(2020年1月28日のニュース)

 「NHK NEWS WEB」によれば、善通寺市の保育所で3歳の女の子が遊具の隙間に首を挟んで亡くなった事故をめぐり、両親が保育所の運営法人など相手取って損害賠償を求めていた裁判で、高松地方裁判所は、法人に3000万円余りの賠償を命じる判決を言い渡した、とのことです。


 この件に関しての具体的な情報や経緯などは全く分かりませんが、一般的に、設置してある遊具によって事故が起きた場合の損害賠償請求の根拠としては、@製造物責任の追及、A土地工作物責任の追及が考えられます。

 製造物責任の追及は、製造物責任法(PL法)に基づくもので、製造物に欠陥がある場合に、製造業者(メーカー)に損害賠償請求をする方法です。PL法にいう「製造物」は動産に限られますので、土地に設置されている遊具が不動産ではなく「製造物」にあたると言えれば、PL法に基づく責任追及が可能となります。被害者にとってのポイントは、製品に欠陥があることは証明しなければなりませんが、メーカーの落ち度を証明する必要はないという点です。なお、被害者が責任追及できるのは、製造物が市場に出てから10年間に限るという期間の限定があるのも特徴です。

 次に、土地工作物責任の追及は、民法に基づくもので、「土地の工作物」(土地にくっついて作られた設備のようなもの)の設置や保存に不完全な点がある場合に、設備の占有者や所有者に損害賠償請求できる方法です。固定式の遊具は「土地の工作物」ですので、遊具が当然に持っているべき安全性を欠いているような場合は、遊具の占有者である運営法人などが損害賠償をしなければなりません。被害者にとってのポイントは、工作物の設置や保存に不完全な点があったことは証明しなければなりませんが、占有者や所有者の落ち度を証明する必要はないという点です。

 なお、この土地工作物責任によって被害者に損害を賠償した占有者や所有者は、安全性を欠くような遊具を作成した製造業者に落ち度がある場合、被害者に賠償した分を製造業者に対して請求することができるとされています。

遊具・画像.png
posted by 上田孝治 at 12:00 | TrackBack(0) | 世の中のニュースを徹底分析

2020年01月27日

遺産狙いの結婚を見破る(?)一つの質問

 遺産狙いで資産家の高齢者と親しくなり、あの手この手で多額の遺産を手に入れるという話は、世間一般のみならず、仕事上もときどき耳にします。
 かつて「後妻業」という形で話題にもなりましたが、こういう話において、犯罪手段によらずに、遺産を手に入れるルートとしては大きく2つあります。
 1つ目は、遺言を作成してもらうルートです。この「遺言ルート」は、結婚していなくても可能な方法ですが、何と言っても、資産家本人の意思に基づいて遺言を作成してもらわなければ始まりません。特に、高齢者が認知症などで判断能力が乏しい場合、公正証書遺言であれば、そもそも公証人から作成を断られるケースもありますし、自筆証書遺言であれば、その有効性をめぐって法定相続人である親族との争いが生じる可能性が高くなります。また、仮に有効な遺言を作成していたとしても、法定相続人から遺留分侵害額請求を受けることで、受け取れる額が減る可能性もあります。
 2つ目は、結婚をするルートです。「結婚ルート」によれば、遺言など全くなくても、配偶者として、当然に一定額を受け取れることになりますので、遺産を手に入れたい側としては確実な方法と言えます。もちろん、結婚しても、その後に離婚してしまえばこの方法も終わりですが、片方が離婚を拒否している場合、浮気や暴力などの特別の事情がない限り、なかなか離婚は認められません。また、結婚している場合、「配偶者には一円も渡さない」という遺言を作成することはできますが、その場合でも配偶者には遺留分がありますので、遺言むなしく、一定額は配偶者の手に渡ってしまうことになります。
 というわけで、資産家の高齢者が結婚してしまうと、結婚後に「実は後妻業的な話だった」と分かっても、基本的には後の祭りということになります。
 なお、遺留分については、生前に家庭裁判所で手続をして、裁判所の許可をもらって放棄することができますので、遺留分の生前放棄を条件として結婚するというやり方も考えられなくはありません。しかし、遺留分放棄の許可には、放棄の代償のようなものが必要とされますので、「結婚する」というだけでは代償とは言えず、裁判所の許可はもらえないと思います。もっとも、実際上は、結婚の話が出た際に、資産家の方から「結婚した場合、遺留分の生前放棄をお願いしたい・・・」などと言うと、後妻業的な人であれば勝手にフェードアウトするような気もしますので、このような質問をすることは、遺産狙いの結婚かどうかを見破るためのリトマス試験紙としての意味はあるかもしれません。
posted by 上田孝治 at 14:19 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム

2020年01月23日

定期購入トラブルと広告・表示に関する法規制のポイント

化粧品や健康食品などの定期購入トラブルにどのように対応すればよいか、通信販売における広告や表示についてはどのような法規制があるかなどについてのポイントを解説しています。

定期購入トラブルと広告・表示に関する法規制(2020年1月).pdf

【目次】
1 特定商取引法の通信販売における広告ルールとその違反
 ⑴ 広告に関する行為規制(違反すれば、基本的には行政処分)
 ⑵ 広告に関する民事ルール

2 電話番号の表示
 ⑴ 特商法の通信販売における広告の表示義務で求められる表示   
 ⑵ 表示義務の違反とは・・・
 ⑶ つながりにくい電話番号と表示義務違反

3 特定商取引法の通信販売における返品特約
 ⑴ 「返品特約」とは何か
 ⑵ 単なる「返品不可」という表示の意味
 ⑶ 最終確認画面における返品特約の表示
 ⑷ 通信販売における返品特約に関する表示義務

4 アフィリエイト広告と景品表示法
 ⑴ 「景品表示法」の規制対象者
 ⑵ アフィリエイトによる不当表示   
 ⑶ 景品表示法違反の場合、どうなるか
 
5 健康増進法、薬機法の表示規制
 ⑴ 健康増進法の定める虚偽誇大表示の禁止
 ⑵ 薬機法の表示規制

6 定期購入と消費者契約法
 ⑴ 〔検討すべき点T〕定期購入における自動更新条項と消費者契約法の不当条項
 ⑵ 〔検討すべき点U〕継続購入の義務づけと消費者契約法の不当条項

7 定期購入事案の考え方(まとめ)
 ⑴ インターネット通販において、定期購入であることの明確な表示が要求されるタイミング
 ⑵ 定期購入事案におけるチェックポイント
  ア.そもそも、(何かしらの)契約は成立しているか 
  イ.アで契約が成立しているとして、成立した契約の内容は?
  ウ.成立していないはずの契約に基づく商品の送付
  エ.契約が成立している場合の法定返品権の行使
  オ.広告に関する規制違反の指摘

2020年01月20日

「ひょうご宅建プレス」に、不動産売買契約における解約手付の記事が掲載されました

 一般社団法人 兵庫県宅地建物取引業協会の広報誌である「ひょうご宅建プレス」の2020年1月号に、「解約手付による不動産売買契約の解除と履行の着手」というタイトルで記事を書きましたので、最後にリンクを張っておきます。
 手付に関する宅建業法の規制、宅建業者が自ら売主となる不動産の売買契約における手付による契約の解除についての裁判例などをまとめています。

 「ひょうご宅建プレス」(2020年1月号)「解約手付による不動産売買契約の解除と履行の着手」

200120・ひょうご宅建プレス.jpg
posted by 上田孝治 at 14:58 | TrackBack(0) | 不動産・宅建コラム

2020年01月15日

遺言書に印鑑が押されていなかったので、勝手に印鑑を押してみたら・・・

 自筆証書遺言には、その効力が認められるための厳格な要件が定められており、その要件の一つに印鑑が押してあることがあります。ですので、押印のない自筆証書遺言は要件を欠いて無効になります。遺言が無効ということになれば、遺言に書いてある内容とは関係なく、法定相続に従った相続が行われることになります。つまり、印鑑がないだけで、遺言を作った意味はなかったとうことになるのです。
 では、遺言者が自筆証書遺言に印鑑を押さないまま亡くなった場合に、その遺言を見つけた相続人の一人が、慌てて亡くなった方の印鑑を使って遺言書に印鑑を押した場合、どういうことになるのでしょうか。
 まず、大前提として、いくら本人の印鑑であったとしても、遺言を作成した本人が押印していないわけですので、(そのような不正が発覚するかどうかはさておき)この遺言は無効です。したがって、後でいくら印鑑を押したところで、遺言に従った遺産の分配はされないことになります。
 もっとも、これだけでは終わりません。次の段階として、勝手に印鑑を押した相続人が「相続欠格者」となるのではないかという問題が出てきます。「相続欠格」というのは、遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿などをしてしまった者が、相続人から外されてしまうという制度です。つまり、相続欠格者は、法定相続に従った相続もできないことになりますので、およそ何ももらえないということになってしまいます。
 この点、遺言に勝手に印鑑を押すという行為は、確かに遺言書の偽造や変造にあたり、「相続欠格」となってしまいそうな気がしますが、最高裁昭和56年4月3日判決で、遺言の方式を整えて遺言者の意思を実現させるための行為であり、遺言に対する不当な干渉とは言えないなどとして、勝手に印鑑を押しても相続欠格者にはあたらないと判断されたケースがあります(なお、しつこいようですが、相続欠格にはあたらなくても、遺言としては無効です。)。
 とはいえ、ケースバイケースの判断となりますので、遺言書に勝手に印鑑を押すことが絶対に相続欠格にならない、とまでは言い切れませんので、相続欠格になって何も相続できないという悲惨な結果にならないためにも、勝手に印鑑を押すような行為は避けるのが賢明です。
posted by 上田孝治 at 11:40 | TrackBack(0) | 相続・家族コラム